暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
~恋慕と慈愛の声楽曲~
Sweet Day
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』でも間違いではありませんが。ゆえに、その気になれば何日でも活動できますよ」

「マイちゃんは?」

「彼女はほぼ私と同一ですからね。なのにいつもぐーすか寝ているのは、単純に寝ることそのものを好いているんでしょう」

滲んだ汗を、首に引っ掛けた薄手のタオルで拭った女性は、呼吸を整えるように吐き出した呼気と一緒に呟いた。

彼女は気付いているのだろうか、とウィルはなんとなく考えた。

寝る必要もないのに寝ているということ。それはつまり、少しでも人間に近付きたいという意思なのではないか。あの真っ白な少女の場合、それは明らかにある少年のためだろう。

ではその時、眼前の巫女服の女性――――カグラはどうなのだろうか。

彼女は確かに、普段は寝食を普通に摂っている。しかし彼女にとって、その優先順位は著しく低いという判断を下さずにはいられない。

それは遠まわしに、人間であることの否定に繋がるのではなかろうか。

ウィルは知ったことではないが、カグラは過去に《人》になることはできないと明言したことがある。

《人》にはなれなくとも、《人》にはなれねども、糸の切れた《人形》にはなれる。

それが今の彼女の根底を支えるものなのだ。

「にしても、予想はしてたッスけど、なかなか伸びないスねぇ」

「そうですね……」

タオルを手から離し、柄に刺さった大太刀《冬桜(とうおう)》に視線を落とした。

神秘的な森の中で所在なさげに立つ巫女という図は、そのまま切り取って絵画にできそうなほどの魅力を振りまいていたが、ウィルはそれを振り払うように手を伸ばしてミネラルウォーターのボトルを手に取る。

放っておいたので若干ぬるくなった液体がノドを滑り降りていく感触を味わいながら、男はもう一度思考の海の中に身を投じた。

二人が、現実と仮想をわざわざ繋げてまで何をしているかというと、修行である。

2025年初頭に全世界を激震させる、それこそ世界そのものを変動させるブレイクスルーとまで言われているあの《種》の一件より少し前、ウィルとカグラは互いの意見の対立から敵対したことがあったのだ。無論それは現実ではなく、このALO内でのことなのだけれど。

その時ウィルは敗北し、その後のことを伝え聞くほどしか知らないのだが、どうやらこの女性は己の非力さを味わわされるほどのことを体験したらしい。彼女は別に自尊心の塊でもなんでもないのだが、しかしその反面力がないという事実そのものを容認できない。

だから彼女は自分の存在を保つために全力を尽くす。

だが、だがである。

リョロウこと柳月(りゅうげつ)狼駕(ろうが)を通じて連絡してきたメールの内容が、『邪魔してきたので《多刀流》を教えてください』ってのはどういうこっちゃねん
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