第百九十四話 長篠城の奮戦その十一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「色々な、わしもしておるがのう」
「織田だけでなく武田にもですな」
「両方に」
「しかにどちらもな」
「全くかからぬと」
「殿の策に」
「そうじゃ、困ったことじゃ」
飄々とした言葉は変わらない、見れば顔もだ。
笑っている、そして言うのだ。
「どうしたものかな」
「殿、この度の戦は」
家臣の一人が眉を顰めさせて松永に言って来た。
「勝った方がです」
「敗れた方を取り込むな」
「この戦でそれが決まります」
「ここでわしの策が通じぬとな」
あくまで策は仕掛けているとだ、松永は言うのだった。もっとも家臣達もそうは見ていないがお互いにそうしたことは言わない。
そおれをわかっているのかいないのかだ、松永はさらにその言葉を続ける。
「生き残った方が大きく天下に近付くな」
「それがわかっておられるのですね」
「殿も」
「うむ、わかっておる」
確かにと言う松永だった。
「我等もここで動かねば危うい」
「闇が天下を覆うには」
「ここで何とかせねば」
「さもなければです」
「このまま日輪が世を覆います」
「日輪のう。最近いつも見ておるが」
それでとだ、松永は陣中の松永がいる方を見た。そうしてそのうえで自身の家臣達に対してさらに言うのだった。
「悪いものではないやもな」
「それは真のお言葉でございますか」
家臣達は松永の今の言葉にだ、眉を顰めさせて問い返した。
「殿の」
「戯言じゃ」
そういうことにする松永だった。
「気にするでない」
「そうであればいいのですが」
「まあとにかく、ここで動かねばな」
「左様です、闇が世を覆う絶好の機をです」
「逃してしまいます」
「戦国の世を続けさせ」
「その間に我等の力を伸ばす」
それをする為にというのだ。
「もう少し戦乱であってくれなければ」
「さもなければなりませぬ故」
「一向宗に紛れて暴れていたことも止められました」
「比叡山、高野山でも」
「朝廷はまだかろうじて高田殿がおられますが」
「都でも逃げ出す羽目になっています」
「思えば危ういのう」
他人ごととして言う松永だった。
「我等は」
「全ては織田信長のせい」
「あの者に全てやられています」
「あの男にしても武田にしてもです」
「色のある者達にまとまってもらっては困ります」
「何としても」
「ですから殿」
松永にだ、彼等も強く言うのだった。
「ここはです」
「絶対に」
「わかっておる、まあ後はな」
「織田が引っ掛かるかですか」
「武田も」
「そうじゃ、見るだけじゃ」
そしてだ、こうも言うのだった。
「しくじればその時はまた罠を仕掛ける」
「だといいのですが」
「その様ですと」
「わかっておるからのう、わしも」
何がわかっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ