第三十六話 古都においてその八
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「平安時代も平安時代で権力争いあったけれど」
「鎌倉幕府とは全く違ったわ」
「精々流刑になる位でな」
「殺し合いまではね」
なかったとだ、菖蒲も言う。
「なかったわ」
「戦国時代より酷かったんじゃね?源氏のそれって」
「そうかも知れないわ」
「親子兄弟で殺し合うなんてな」
薊は苦い顔で映画村のセットの一つである芝居小屋を観た、助六や弁天小僧といった有名な演目の看板がある。
「嫌なものだぜ」
「全くですね」
桜も憂いを見せて応える。
「我が家の家訓は家族は一つです」
「つまり仲良く、だよな」
「はい、そうです」
その家訓があるからだというのだ。
「私は親娘姉妹共にです」
「仲良くしてるんだな」
「そうしています」
「そういえば桜ちゃん妹さん達に慕われてるな」
薊は桜にこのことも言った。
「いつも」
「有り難いことに」
「いいお姉さんってことか」
「血はつながっていないのですが」
「あはは、それ言ったらあたし達全員そうだよ」
それこそとだ、薊は桜に笑って返した。
「あたし達全員孤児じゃないか、だからな」
「だからとは」
「そのことは一緒だよ、それに血はつながってなくてもさ」
それでもというのだ。
「心でなるものっていうしさ、家族って」
「だからですね」
「あたしは家族いないけれど皆な」
桜だけでなくな、ここにいる力を持っている少女全員がというのだ。
「家族を持ってるんだよ」
「そう考えていいのですね」
「だから皆な」
ここでも仲間に言った。
「それでいいんじゃね?」
「家族がいるから」
「血がつながってなくても」
「あたし家族いないけれどさ」
孤児院で生まれ育った自分自身のこともだ、薊は言った。
「それでもだよ」
「家族は血じゃない」
「心っていうのね」
「そうだよ、血がつながってても子供虐待する馬鹿親もいれば」
嘆かわしいことにだ、己の子を虐待すること程醜いことはないことであろう。そうしたことをする輩もいるのが社会だ。
「皆みたいにさ」
「優しい家族の中にいる子も?」
「血がつながっていなくても」
「だから皆幸せなんだよ」
そうした家族がいてくれるからこそというのだ。
「あたしも家族はいないけれど孤児院の皆がいるから」
「その人達が薊ちゃんにとっての家族?」
裕香は首を少し傾げさせて薊にこう問うた。
「そうなるの?」
「かもな、とにかくな」
「家族は血でなるんじゃなくて」
「心でなるんじゃね?」
薊は再び自分の持論を述べた。
「養子でもさ」
「そうね、私もね」
菫が薊の今の言葉に微笑みと共に答えた。
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