第四章 『再会』
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が、エヴァンジェリンの脚に返ってきた。バー ジルはエヴァンジェリンの蹴りが入る刹那の時、右腕へ魔力を集中させ、硬質化させたのだ。 肉体が打ち合ったとは思えない音とともに、エヴァンジェリンの蹴りは大きく弾かれていた。
蹴りを弾かれたことで態勢が崩れたエヴァンジェリンだったが、更にそこから変型の踵落としを見舞う。並の者なら反応すらできないだろう。
しかしバージルは、エヴァンジェリンが態勢を崩したことで自由になった閻魔刀の鞘を当て、またもやエヴァンジェリンの脚を弾いた。さらにバージルは体を 一度捻り、いわゆる回し蹴りをエヴァンジェリンの胴体に入れた。エヴァンジェリンは寸前に腕を挟んだ事で直撃を避けた。しかし骨が折れる音とともに、エ ヴァンジェリンは吹き飛ばされてしまう。
「ッ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック『来たれ、氷精、闇の精!」
舌打ちをしつつも空中で態勢を立て直したエヴァンジェリンは、氷の上へ着地する。そして同時に、詠唱を完了した『闇の吹雪』を放とうとするが――エヴァンジェリンの前には、バージルがいた。既に閻魔刀の刀身は半分抜かれている。
(なッ……に!)
エヴァンジェリンはバージルの接近に気を払っていなかった訳ではない。いや、むしろバージルの動向を捉えていた。というのも術を行使する時というのは、大きな隙が生じやすいからだ。しかしエヴァンジェリンはバージルの接近に気が付かなかった。
これはまさに致命的なことだ。現に鞘から解き放たれた白刃は、エヴァンジェリンへ迫ってーいた。閻魔刀は魔を喰らい尽くす魔剣である。エヴァンジェリンは不死身であるが、それでも相当なダメージを負ってしまうだろう。もう刃がエヴァンジェリンへ届こうとした時だった。
閻魔刀が甲高い金属音を立てて、赤い影と衝突した。それは、エヴァンジェリンとバージルの間に割って入ってきた、ダンテだった。
閻魔刀とリベリオン。二本の魔剣が、幾年の月日を経て再び交わった。それはまた、ダンテとバージルの再会を、端的に表していた。
しかし、二人の間に会話は無く、ダンテの青い目とバージルの赤い目が、互いを見据えているだけだった。そして刃を交えたのも束の間、二人は飛びのいて距離をとった。
ダンテはリベリオンを構えも仕舞いもせずに、ため息を一つついた。
「しばらく見ないうちにまた随分なナリになったじゃねぇか。気難しく眉間に皺寄せてた方がらしかったぜ」
自身の眉間を指で叩きながらダンテは、相変わらずの口ぶりで、まったくの無表情のバージルに話し掛けた。いつ以来であろう? 最後にバージルの姿を見た のは4年前のマレット島であり、最後に声を聞いたのは8年前のテメンニグルである。もはや会うことはないはずだった、兄弟の再会に――バージルは何も返さ なかった。
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