第08話 昇天のサバキ
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が撃たれた時の光景を。
その時の彼はとても弱そうで、今のような状況まで
追い込まれるとは全く想像できなかった。
だが、今は違う彼の目には謎の闘志が溢れて来ていた。
人はこうも簡単に変わることが出来るのだろうか?
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
サバキは少しの沈黙の後につぶやいた。
「そんなの俺の勝手だろ」
彼の声はわずかながら震えて聞こえた。
それは恐怖ではなく、哀しみのように感じた。
「‥‥‥‥‥‥‥予定変更だ。今、殺す」
サバキはさらに強く糸を締め付けた。
ギリギリギリギリッ
「うぐッ!‥‥‥‥がァッ!」
セキレイは五体がバラバラになりそうなほど締め付けられ
意識が別世界へと飛びかけた。そのとき――――――
頑張って!!―――――――セキレイお兄ちゃんッ!!―――――――――――
暗闇の中からハトが呼んだ気がした。
もちろん、それは幻聴だった。彼女はジョンとカツコと逃げたのだから。
それでも‥‥‥‥‥彼は信じたかった。彼女が心の底から待っていることを。
「うおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁあああああッッッ!!!」
ブチッ! ブシュウッ! ブチチッ!
セキレイは両腕に力を込めた。
肉が裂けて血が噴き出しているが、構わなかった。
「なっ、テメェ血迷ったか!?」
否、セキレイは腕の筋肉を締め上げることで糸を固定し
逆に切れないようにしたのである。そうすることで
糸を手で持って引っ張っているのに等しい状態になったのだ。
「オラァッッ!!」
ブチブチィィッ!!
糸が千切れ、自由になった両腕をセキレイは横に広げた。
始めから持っていたはずのモノを取り戻すのが
これほど素晴らしいものなのだろうか。
きっと外に出れた時の爽快感はこれを遥かに上回るモノだろう。
そう、彼は予感していた。
「おれは‥‥‥‥‥“自由”を取り戻す!!」
ダンッ!!
セキレイは床が変形するほどの勢いで蹴った。
物凄いスピードでサバキの元へと近づいて行った。
「馬鹿がッ!」
ビンッ!
サバキはセキレイが突っ込んで来ている付近に数本、糸を張った。
「そのまま縦に真っ二つになっちまえ!!」
空中では方向を変えることはできない。
万事休すなのだろうか。
バサァッ!
否!彼は持っていた。羽ばたくための翼を。
それによって軌道を僅かながら逸らした。
「飛ぶ専用の翼じゃなくても、これくらいはできるんだよ!!」
ヒクイドリは翼が退化しているが
セキレイは"重力無効"を使用することで
体重をほぼゼロにし、羽ばたいた抵抗での移動を可能にしたのだった。
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