第三章 『イレギュラー』
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が話を切り上げた。なぜなら、造物主の使徒達が既に襲い掛かろうとしていたからだ。
「ハッ! 数を揃えたところで!」
セクンドゥムが肉体を雷化し、先制を図る。標的はエヴァンジェリンだ。雷化したセクンドゥムの速度はネギの雷天大壮に近しいものであり、反応していないエヴァンジェリンを見てセクンドゥムは「殺った」と確信した。そして同時に吸血鬼の真祖などただの噂話、過大評価だ、とセクンドゥムは考えていた。
そこには、造物主に最強として生み出された自分が敗れるわけがないという信じて疑わない自信があった。真っ先に先制を仕掛けたのも、使徒の中でも自身は特別であるという思いからかもしれない。
そう思考していたセクンドゥムの目の前に、切っ先が三つ現れた。クルトと詠春、そしてダンテの三者が剣を振り下ろしていたのだ。それを認識したセクンドゥムは反射的に動きを止め――吹き飛ばされた。先ほどと同じく、タカミチが放った無音拳に。
「クソッ!」
セクンドゥムが吹き飛ばされるとそれを合図にしたかのように造物主の使徒達が動き出し、ダンテ達も同時に動いた。達人の域を超えた剣や拳、魔法がぶつかり合う。その光景はまさに壮観。これほどの戦闘は稀に見ないだろう。
そうして地上で激戦が繰り広げられる中、明日菜を封じる結界の前で千雨達が考えあぐねていた。明日菜を包む結界を外から解除しようと試みていたのだが、突破できないのである。
「偽フェイトのヤロー、さらに強力な概念結界を重ねがけしていきやがった!」
プリームムはここから去る前に、さらに結界をかけたようである。この概念結界は障壁等によって対象を守る他の結界とは違う。強力な魔力によって擬似的な世界を創造し、対象を内包するものだ。その使用の難易度は、結界の中でも最上級のものであり、またその硬度はエヴァンジェリンやダンテ達でも突破は難しいほどだ。
しかし諦めるわけにはいかない。諦めるわけにはいかないが、打つ手が無いのが現状だ。
「結局外からはダメか!?」
「……ああ、外からの解除は無理だ」
カモの問いに千雨は焦りと苛立ち混じりに返した。そして自身のその返答に、もう無理じゃないのか? という僅かにあった気持ちがどんどん広がっていく。
頼りになる者たちは全員眼下で戦っている。アドバイスや助言などを聞く事は当然できない。つまり明日菜を、策のない中学生の自分たちだけで助けなければならないのだ。
そう思えばあとは一気に気持ちは傾いていく。思考は鈍くなり、さらに焦りが大きくなる悪循環。もはや諦めが千雨を支配していた。自暴自棄に陥っていると言うべきかも知れない。
「――」
そんな千雨の耳にふと声が聞こえた。聞こえたその声は微かだった。だが、とても頼りになる男の声だった。
「呼び
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