第三章 『イレギュラー』
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そうしてあとに残ったのは、渦巻くようにそびえ立つ氷と、氷漬けにされた使徒達であった。特に古龍龍樹はまさに氷の彫刻の様であり、美しくもある。
「とまぁ、ざっとこんなところだ」
そう言ってエヴァンジェリンは氷の一端に降り立った。傍らには気絶して動けないネギが浮かんでいる。そしてダンテとアルも降り立った。
「Wow, It's cool! こいつは一体どうなってんだ? 嬢ちゃん?」
ダンテが近くの氷柱をコンコン、とノックしながら呟いた。正直にダンテは驚いていた。これほどの氷結能力を持つのは、悪魔の中でも一握りである。それを見た目は少女のエヴァンジェリンが放ったのだ。驚嘆に値するのは当然だった。
「フン、障壁ごと周囲を凍らせ続けてるだけだ。死ぬこともできず、再生すら出来ないようにな。ちなみに精神はそのまま生かしてある。もう私にも解けんから永遠に恐怖が続くというわけだ」
「フフフ、酷いことをしますね」
死ぬこともできずに、死ぬ間際の恐怖を永遠に味わい続けるなど、想像するだけでも恐ろしいことだろう。そう考えると使徒達はまさに悲惨な最後を遂げたと言わざるを得ない。
「まぁこんな事もあろうかと、修学旅行以来ちまちまと練っておいたオリジナル呪文だ。もっとも基本的に“人形”限定だから使いどころが難しいんだがな」
「“人形”限定ということは、かの造物主へは?」
エヴァンジェリンのその言葉にアルが反応した。エヴァンジェリンの言葉を額縁通りに受け止めれば、呪文の対象は創造された使徒達に限られ、肝心の黒幕である造物主はその対象にないことになる。
そうするとこのように悠長に話している時間などないだろう。しかしエヴァンジェリンは落ち着き払ってアルの問いに返した。
「奴も無理矢理ロックオンしておいた。もっとも、毛ほども効いてないだろうがな」
『終わりなく白き九天』は対象が”人形”に限定されている。それにも関わらずエヴァンジェリンは、無理矢理に造物主も対象に含めたというのだ。自身が作り出したオリジナル呪文とはいえ、そんなデタラメなことが出来るのも流石というべきだろう。もっとも無理矢理対象に含めたので、造物主に対するその効力は完全に発揮されるわけではないようである。
「まぁ足止め程度にはなるだろう。今のうちに坊や達を連れて麻帆良に戻るぞ」
エヴァンジェリンがそう言って踵を返した時だった。
氷の世界へと姿を変えた宮殿に、甲高い音が一つ走った。嫌に響いたその音が鳴り止まない内に、エヴァンジェリン達は気が付いた。
それが鍔鳴りであることに。
しかし気がつくのが遅かった。瞬き一つもない間に、氷の山が斬られていた。それも幾つにも。
「なに!?」
崩れた足場から退避していくさなか、
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