第三章 『イレギュラー』
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は流石のダンテも驚嘆した。が、すぐにそれを内に隠していつもの調子に戻した。
「おいおい嬢ちゃん。ここは見ての通りR指定だ。早くママの所に帰んな。でないと悪い奴に食べられちまうぜ?」
ダンテの軽い態度にもザジは全く気にしていなかった。それどころかニコッと微笑むと、再び口を開いた。
「ご心配には及びません。私はあなたの父君が裏切った魔界に生まれた、魔族ですから」
瞬間、空気が張り詰めた。
ザジはなにもしていない。ダンテの表情も何一つ変わっていない。
だがダンテの放つ雰囲気は一変していた。まさに“悪魔”を前にした時のプレッシャーだ。実際、いつの間にかアイボリーのセーフティーを解除している。
だがザジはどこ吹く風。少し間を開けると、また話し始めた。
「あなたの父君については母からよく聞いております。彼の魔帝を打ち破った我等の英雄、と」
魔剣士スパーダの存在は、二千年という長い月日の中で人々の記憶から忘れ去られ――ダンテは知らないが、今もなお魔剣士スパーダを神として崇める地方はある――今やお伽話としても語られないほどだ。
もっとも、多くの魔族に至っては二千年という時間が流れてもその恨み辛みは忘れてはおらず、もはやスパーダの血を憎むのは半ば本能に近くなっている。そのためダンテが出会ってきた魔族達は仇討ちをしようとする者がほとんどだった。
つまりスパーダを英雄と讃える者など、人間にも魔族にも皆無に等しかった。それなのに魔族の者が唐突に父スパーダを英雄と讃えたとなれば、流石のダンテも不意をつかれたように呆気にとられてしまった。
そんなダンテを尻目に、ザジは続けた。
「この度あなたをここへ呼んだ依頼主は私です。偽の情報を流した非礼は承知の上で、あなたに本当の依頼をお願いします」
「悪魔から依頼を持って来られるとはな。いいぜ、取り敢えず聞いてやるよ」
それを聞いたザジは一歩進んでダンテへの本当の依頼を告げた。
「あなたの父君が打ち倒し、あなた自身もかつて封印した彼の魔帝を解き放とうとしている者がおります。その者を我々と共に止めて頂きたいのです」
「Come on!」
ドロドロに融解した地面へと降り立ったダンテの言葉に従うように、地面に突き刺さっていたリベリオンが彼の手に戻ってきた。
ダンテはザジの依頼を当然に快諾し、彼女の力で魔法世界へ飛んだ。魔族であるザジを狩るべきかとも考えたが、それよりも魔帝を復活させる事のほうが放っておけなかったからだ。
「で、お前が奴を蘇らせようとしてる奴か?」
リベリオンを肩に担いだダンテが問い掛けた。いつもの皮肉った笑みは鳴りを潜め、するどい眼光が造物主へ突き刺さる。しかし、造物主はそれを意にも介さない様子だった。答える必要はない
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