王の荒野の王国――木相におけるセルセト――
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なく転落していきながら、女は唐突に相手の正体を理解し、叫ぶ。
「サルディーヤ、貴様ァ!」
ベッドから落ちた。腰と肩を強打し、女は呻く。ひどく寒い、そして冷たい場所だった。呻きながら目を開けると、床は青い石になっていた。凍てつく風が吹きすさぶ。頭上に雲が厚く折り重なっているのを見て、初めて野外だと気が付いた。
ここはどこ。女は恐慌に駆られる。自宅じゃない。東京でもないみたいだ。ここは。私は。
ここは王の荒野だと、ニブレットの自我で女は思った。
「答えが見つかるまで」
ヘブの声が響き、赤毛の王女は寒さも冷たさも感じぬ体を竦めた。
「この世界の前階層から続く貴様の魂の遍歴を一つ一つ見せてやってもよかったのだが、もう充分なようだな」
手許には漆黒の剣と鞘、黒曜石の鏡が落ちていた。ニブレットはそれを拾い集める。
「我が神よ――」
「汝に問う。して、貴様は何者だ?」
女は少ない手荷物である鏡と剣をかき抱き、呆然と座りこんだ。ヘブの気配が、嘲るような笑い声と共に、王の荒野の彼方へと、遠ざかっていった。
やがて女は口を開いた。
「私は誰だ?」
答える者はなかった。
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