第一章 『吸血鬼と悪魔』
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、精霊に呼びかける呪文を唱える。すると彼女の右手に黒い塊が現れる。その塊は凝縮された魔力。そしてエヴァンジェリンが右手を突き出すと、その魔力の塊が放たれた。
その魔法は『闇の吹雪』。強力な吹雪と暗闇を発生させる魔法である。巨大な渦となり猛烈な吹雪を伴ったそれはまさに黒く渦巻く竜巻だった。この魔法はもと もと破壊力が高いが、エヴァンジェリンは通常よりも多く魔力を篭めていた。そのため放たれた魔法の大きさと威力は、桁が違っていた。
闇の吹雪が召喚魔の群れを直撃した。猛る闇と吹雪のうねりが召喚魔を襲う。余りの力に召喚魔が原形を維持出来ずにバラバラになっていく。それでも闇の吹雪は直進を止めることは無く黒い波を突き抜ける。
結果、召喚魔の波が真っ二つに裂かた。
「凄いな、これならこっちの出番はなさそうだ」
ダンテがその光景を見てエヴァンジェリンに拍手と共に言った。彼女が振り返ると、ダンテは屋根の端に立っていた。どうやら吐血も止み、腹の凍傷も治っているようだ。
「そういうわけで俺は下にいる奴らをもらうぜ。上は譲ってやるよ。アディオス、子猫ちゃん」
ダンテはウインクをするとエヴァンジェリンの方を見たまま、背中からダイブした。そしてダンテは、それまで自分がいた所が爆発する光景を見た。
彼は知らないことだが、エヴァンジェリンのフルネームは『エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マグダウェル』であり、彼女はキティと呼ばれるのが大嫌いだった。
そしてダンテは知らないまま、子猫と呼んでしまったことで、彼女の癪に障ってしまったのだ。
落下中のダンテは、先程まで繰り広げられた剣戟を思い返していた。あの時は本気を出しておらず、加減をしていたとはいえ一撃を貰うとは思ってもいなかった。しかし彼は腹を貫かれてしまった。それは彼女が加減をすべきではない存在だったということである。
それに彼女は吸血鬼らしい。長いこと裏稼業であるデビルハントをしてきたダンテは初めて本物の吸血鬼と会った。もっとも、実際はダンテの興味が向いていなかっただけであり、ダンテが悪魔をハントするように吸血鬼のハントを生業とする者はいる。
ダンテは久々に面白い仕事が回ってきたと喜んでいた。吸血鬼を初めて見て、それはなかなか手応えのある戦いが出来たからだ。そしてなにより地面に降り立った彼を迎えた悪魔だ。これまでいた魔族の影を投影して作られた半人形半肉体の半端者ではなく、自身の肉体と自身の意志で動く悪魔だ。
悪魔達はダンテが降り立った瞬間、赤く光る双眸を更に輝かせ狂喜していた。2000年前に魔界の人間界侵攻を阻んだ逆賊の血を受け継いだ者であり、ダンテ自身も封印されていた魔帝ムンドゥスの復活を阻止した大敵である。
悪魔達にとってこれ以上ない仇だ。彼を、往年の
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