第一章 『吸血鬼と悪魔』
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ターゲットが悪魔ではないなら、彼の仕事ではない。それに少女を痛めつけるような趣味は持っていない。
彼の背にある大剣リベリオンの刀身には、エヴァンジェリンの姿が映っている。また腰に提げられた二丁拳銃のエボニーとアイボリーの銃身が、世界樹の光を鈍く反射していた。
「悪魔ではないから帰る? 確かに私は悪魔ではなく、魔法使いだ。だがそれは言い訳ではないのか? 私には貴様が尻尾巻いて帰るようにしか見えないよ。それにやすやすと見逃すと思うか?」
明らかに挑発ととれるそれを聞いたダンテは、足を止めた。
「あいにく俺の好みは悪魔だけでね。魔女の知り合いならいるが、魔法使いなんてファンシーでファンタジーなもんには興味はないんでね。嬢ちゃんらしくお花を咲かせる魔法でも唱えてな」
「悪魔とか言ってる貴様が、魔法使いをファンタジーと言うか? ああ、それと私はファンシーな魔法使いではない。私は悪い魔法使いだ、とんでもなく極悪級のな」
「そんなフリフリでロリータな格好で悪い魔法使いか。極悪ってなら――」
それまで背を向けていたダンテが振り返った。そしてダンテの手には、いつの間にか腰のホルスターから抜かれた銃が握られている。
「――血の方がらしく見えるぜ?」
ダンテは躊躇なく引き金を引いた。銃口からダンテの魔力が篭められた弾丸が吐き出される。
銃弾はエヴァンジェリンの方へ空気を裂いて直進するが、エヴァンジェリンは微動だにしない。
そして弾丸はエヴァンジェリンの頭を――かすめた。かなり近かっため、エヴァンジェリンの金色の髪が数本ちぎれてしまった。
エヴァンジェリンをかすめた弾丸が直ぐになにかをぶち抜いた。赤い液体がエヴァンジェリンに降り懸かる。彼女の背後には、頭部に大きな風穴を空けた召喚魔が立っていた。
隆々とした肉体に蝙蝠のような皮だけの翼を生やした姿の召喚魔は鋭利な爪を振りかざしていた。エヴァンジェリンを後ろから襲おうとしたのだろう。そこをダンテが銃で撃ったのだ。
頭部に風穴を空けられた召喚魔は力無く崩れ落ち、屋根から落ちていった。見回すと、いつの間にかダンテとエヴァンジェリンの回りには召喚魔が群がっていた。先ほどの召喚魔と同じような姿をしたものから、手に剣を持っていたり、四つん這いで他の屋根を跳び移っていたりと、様々な種類の召喚魔が確認できた。
それをくるりと回って一度確認したダンテは、少しだけ口角を上げた。そして硝煙を上げるエボニーと、ホルスターから抜いたアイボリーを構える。
「Ha―Ha! Let’s Start The Party!」
すぐさま二つの銃口から銃弾の雨が降り始めた。
左右から迫る召喚魔の群れに腕を広げて一瞬にして十数発の鉛弾を浴びせ、撃ち落とす。直ぐさま向きを変え前と後ろに
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