第一章 『吸血鬼と悪魔』
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気を払わなければならない。それは始めは小さかった要素が後々になって大きな障害となったり、小さな要素が大きな番狂わせを起こすことがあるからだ。
そしてそういったハプニングは、得てしてこのような一大事に限って起こるものである。エヴァンジェリンはそれを知っているからこそ、目の前の要素を払っておきたかった。そして彼女には学園に侵入した魔を払う任もある。もっとも普段からエヴァンジェリンは乗り気ではないが。
つまりエヴァンジェリンにはダンテを始末する理由があった。
「私を狩りに来た――か。普段なら遊んでやるところだが、今は貴様に割いている時間はない。悪く思うな。直ぐに終わらさせてもらう」
そう言うと、エヴァンジェリンの右手から白い煙が溢れ出す。パキパキという音が聞こえ、同時に当たりの温度が急激に下がった。それは彼女の右手が作りだした冷気によって、空気中の気体が固体へ昇華しているためだ。そしてそれはエヴァンジェリンが戦闘態勢に入ったという証拠である。
しかし一方のダンテは、両手を軽く挙げて肩をすくめた。
「お気遣いありがとよ嬢ちゃん。でも残念ながら大ハズレみたいだ。あのヘドが出そうな、悪魔の臭いがしないんでね」
ダンテが苦い顔を浮かべていたのはこのせいだ。
そもそもダンテは悪魔狩人であり、読んで字の如く、悪魔を狩るのが彼の本業である。そして今回は、久々に強くてヤバい悪魔だと聞いて、アメリカからはるばる日本の麻帆良学園まで来たのだ。
ところが実際に対象と接触してみれば、“悪魔の臭い”がしないのだ。この“悪魔の臭い”は悪魔が放つ独特な臭い、というよりも、臭いを含めた五感に働き掛ける悪魔が気配といったほうが正しい――ダンテ曰く、臭いだけなら獣の血の臭いに近いらしいが。
ダンテはそれを長年の経験、そしてなによりも本能によってかぎ分けてきた。その“悪魔の臭い”がないという事は、ターゲットとして渡された写真に写る目の前の少女が、悪魔ではないということを表していた。
(ったく、エンツォの野郎。ガセネタ掴まされやがって)
口には出さず、この仕事を持ってきたエンツォにダンテは悪態をついた。
元々、裏の社会でもガセネタというのは溢れ返っているものである。そのためエンツォなどの情報屋や仲介屋は、その情報の正確さ、真偽を見極めなければならない。その情報によって大金が動き、様々な組織が動くからだ。そしてなによりトチれば情報を流した自分がバラされるからでもある。
エンツォは金にうるさいが、そう言った真偽を見極める情報網と、なにより鼻の効く男である。そのため、ダンテはエンツォがガセネタ持ってきたことが意外でもあった。
「そういうわけでお騒がせしてすまないな、嬢ちゃん」
そう言うとダンテは背を向け立ち去ろうとした。
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