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立派な魔法使い 偉大な悪魔
第一章 『吸血鬼と悪魔』
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こともない。だたし、あの世界樹の下……いや、この学園に何が隠されているのか吐けばな」

  エヴァンジェリンは近右衛門から、召喚魔たちは向こうの戦いから漏れた流れ召喚魔と事前に聞いていた。当初は真剣に聞かず聞き流していたせいもあって何も思わなかったが、こんこんと湧き続ける召喚魔を見て違和感を覚えた。なぜなら、向こうの戦いから漏れた流れ召喚魔にしては数が多すぎるのだ。
 更に魔界が動き出したという事実はそれに拍車をかけた。麻帆良学園に封印されていたエヴァンジェリンの耳にも、魔界の状況は少しではあるが入っていた。魔界の帝王の復活と封印についてもだ。もっとも、魔帝ムンドゥスを再度封印した張本人のダンテのことは知らなかったようだが。
 魔界という世界は強力な主導者がいなければ、一つに纏まって動くはずはない。なぜなら、例外はいるものの多くの魔界の住人である悪魔は、理性よりも本能のもと動くものだからだ。そのために魔界では日夜熾烈な殺戮と生存競争が繰り広げられている。
 そのような荒くれどもを纏めていたのが魔帝ムンドゥスだった。しかし、その絶対的な支配がなくなった途端に魔界の纏まりなどなくなり、今日まで終わらない覇権争いが続いていたはずだ。
 だが今魔界が動いているという。それは、魔界が何者かの意志により纏まり、悪魔達は何者かの意志により世界樹を目指しているということを意味している。
 わざわざ魔界が世界樹の為だけに動くとは考えられない。考えられるとすれば、魔界の狙いは世界樹にある何かだ――とエヴァンジェリンは考えていた。また、召喚魔達の召喚主である“完全なる世界”も同じものを狙っているとエヴァンジェリンは踏んでいた。

「この学園に何が隠されているか……か。むぅ」

 ところが近右衛門は言おうか渋っていた。そんな中、アルが口を開いた。

「……キティ。あなたもかつては確かに普通の女の子だったはずですよね」
「突然何を言い出す? 昔話が地雷なのは、知っているよな?」

 それを聞いたエヴァンジェリンは眉間を寄せ、明らかに不快な表情を見せた。しかしアルは構わず続ける。

「あなたを、今のあなたへと変えてしまった人物について、なにかご存知ですか?」
「知るか。おおかた不死の秘宝にでも嵌まった頭の悪い魔法使いだろう」

 抑揚のない、淡々とした答えを返したエヴァンジェリンは、そこで一拍おいて一瞥もなく続けた。

「もう殺した。600年も前の話だ、興味もない」

 興味もない、というのは本心だろう。しかしどこか別の感情があるようにも見える。そんなエヴァンジェリンの横顔を見ながら、アルが問い掛けた。

「……その人物が死んでなかったとしたら?」

 エヴァンジェリンが怪訝な表情を浮かべる。横を向いていた顔をアルへと向けた。そ
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