暁 〜小説投稿サイト〜
立派な魔法使い 偉大な悪魔
第一章 『吸血鬼と悪魔』
[1/13]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 幼等部から大学部まで擁する麻帆良学園の敷地は、とても広い。まるで一つの街であり、学校と言われなければ一見しただけでは分からないだろう。そしてその大きな敷地の中央には、巨大な木がそびえ立っている。270mにもなるその巨木を学園の者は『世界樹』と呼び、学園の象徴的な存在であった。
 そしてその世界樹には不思議な現象が起こる。それは木が光るというものだ。この不思議な現象ゆえに世界樹に興味を抱くものが絶えず、世界樹に関係するサークルがかなりの数存在している。
 そのサークルの中には当然世界樹を観測・研究するものもあり、観測・研究データも長年に渡って蓄積されていた。そこから、22年の周期で発光現象が起きることが随分前から分かっていた。またその原因は、世界樹に生えている発光性の苔類が周期的に活発な発光を行うからではないかと推測されている。もっともそれは“表社会”の説に過ぎない。
 本当は、表ではない“裏社会“で言われている説が正しい。その説によると、そもそもこの発光現象は『長年にわたって蓄積した魔力量が最大に近付いた時に起きる、魔力の放出現象』とされていて、一種の生理現象に近い物であるとされている。
  もともと植物にはそういった、辺りの気や魔力を蓄積・放出する力がある。世界樹の場合、その蓄積量・放出能力が異常といえるほどに高いのだ。その異常とも言える蓄積量と放出能力のために、大気へ放出される魔力が高濃度かつ大量になり、それが結果として発光しているように見えるわけである。
 つまり発光現象とされているものは実のところ、可視するほどに高濃度な魔力の放出現象なのである。
 ただしこの魔力の放出は、世界樹自身が持つ魔力貯蔵量の調整機能にすぎない。そのため異常気象や大気に存在する魔力の量などで周期が前後することもある。
 最後に発光現象が確認されたのは、2ヶ月前の6月に開かれた学園祭『麻帆良祭』の時だった。その時は、ここ数年の異常気象により、22年の周期よりも1年早い21年ぶりの発光であった。
 つまり世界樹はほんの2ヶ月前に、蓄積していた大量の魔力を放出した、ということだ。
 しかし“今”世界樹は煌々と発光している。まだ麻帆良祭から2ヶ月も経っていないにも関わらずに。それもぼんやりとした弱々しい発光ではない。前回の麻帆良祭の時とは比べものにならないくらいに強い発光であり、さながら光の柱のようである。
 当然この出来事は瞬く間に学園中の生徒はもちろんのこと、教員達の話題となっていた。そして、普段は魔法使いの立場を隠している一部の魔法先生・魔法生徒と呼ばれる間でもだ。いやむしろ魔法先生達の方が事の重大さを理解し、より騒然となっていた。
 それもそのはずである。現在、世界樹が発光しているということは、本来なら22年ほどかけて蓄積される魔力が、一瞬にして満たさ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ