第百九十四話 長篠城の奮戦その五
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「それならそれで戦わねばならん」
「それでは」
「そうじゃ」
まさにと言う信玄だった。
「鉄砲は確かに当たれば死ぬ、しかしな」
「撃ってそれからですな」
「時間が空きますな」
「そこが狙い目じゃ、それは矢を放つよりも時がかかる」
信玄はそれもわかっている、それで言うのだ。
「そこをじゃ」
「一気に騎馬隊で、ですな」
飫富がその目を鋭くさせて言って来た。
「攻めて」
「そうじゃ、一気に切り込みな」
「かたをつけますか」
「それが一番じゃ」
鉄砲に勝つにはというのだ。
「間合いを見て鉄砲をやし過ごしてな」
「では勝負は一瞬ですな」
幸村がまた言って来た。
「その突っ込みで決まりますな」
「左様、織田との戦は一瞬で決める」
まさにと言う信玄だった。
「二十万の大軍も倒してみせるわ」
「織田信長、この戦で」
「必ず倒しましょうぞ」
「そしてそのうえで」
「御館様の天下の片腕としましょうぞ」
「織田信長、見ておくのじゃ」
自信に満ちた声で言う信玄だった、今も。
「御主の主となる天下人をな」
「尾張の蛟龍、再びあいまみえる」
幸村はその織田の軍勢が来ている方を見てつぶやいた。
「今度こそは勝つぞ」
「では先陣に行こうぞ」
山懸が幸村に声をかけた。
「これよりな」
「はっ、それでは」
幸村も応える、そしてだった。
武田軍も一路設楽ヶ原に向かう、両軍の決戦の時が迫っていた。
先に場に着いたのは織田軍と徳川軍だった、信長は場に着くとすぐに兵達に命じた。
「丸太を地面に突き刺してじゃ」
「はい、そうするのですか」
「まずは」
「そしてじゃ」
そのうえでだというのだ。
「残った丸太と縄で柵を作るのじゃ」
「ああ、だからですか」
「それで、でございましたか」
ここで兵達もわかったのだった。
「殿は我等に丸太と縄を持って来させたのですか」
「それで、でしたか」
「丸太を前に突き出すだけでは駄目じゃ」
信長はこう兵達に言った。
「それだけでは武田の兵は止められぬ」
「だから、ですな」
「ここは柵を作り」
「そうして、ですか」
「武田の軍勢と止めますか」
「武田は特に騎馬隊が強い」
信長は兵達に柵の置く場所も川の向かい側と手で指し示しながら話した。
「若し戦えばな」
「三河口でそうであった様に」
「こちらの兵が幾ら多くとも」
「鉄砲を撃つ間に突っ込まれ」
「中々勝てませぬな」
「あの時は長槍も使ったがな」
しかし、というのだ。
「武田信玄じゃ、今度の戦いではその長槍への対し方も考えておるわ」
「だからですか」
「柵を築き」
「そうして武田の兵を止めますか」
「その通りじゃ」
まさにというのだ。
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