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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第十九話 強奪と僅かな休息
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アルフレートと螢の戦いは結果を見ればどうみても螢の大敗だった。トバルカインの聖遺物はカリグラに奪われ、アルフレートに向けて放った攻撃はまともに通ることもなかった。
アルフレートは螢に対して軽くあしらうように相手にしていた。無論、本来ならそこまでの差が出ることは無かったのだろうが状況が悪すぎた。一分でも早く、一秒でも早く決着をつけなければならない。そんな状況下で勝てるほどアルフレートは甘い相手ではない。

「君はこの場において敗者となった。トバルカインを救うには至らなかったということだ。しかし、それでも尚、諦めきれないというのならスワスチカを開いてラインハルト殿に懇願すればいい。彼を生き返らしてくれ、と。尤も彼の手によって生き返るということがどういうことなのか理解している今の君に出来るかは疑問だけどね」

「ふざ、けるな……ッ!」

唇を噛みながら搾り出すように声を出す螢。彼はそれを一瞥しただけで先程までトバルカインだった者―――今はもうカリグラというべきだろう―――人物を見る。そして気付いた。

「全く、あの女はどこまで警戒してたのだか……流石はバビロン・マグダレーナというべきか。ヴァレリアとエレオノーレを警戒してのことだったんだろうな。尤も剣だけ残っても継承する人間が居ないのなら意味が無いだろうに」

(問題はこれが故意に起きたことなのか偶然なのか。隠していたのは確実だろうけど厄介だな)

そう言って彼はカリグラの持つ「黒円卓(ヴェヴェルスブルグ)の聖槍(・ロンギヌス)」の内側に存在した剣を出すように命令する。自分の主であるアルフレートの命令を聞いたカリグラは己の物となった「黒円卓(ヴェヴェルスブルグ)の聖槍(・ロンギヌス)」の内側を確認し、その剣を取り出した。
その見た目は剣というよりも歪な形をした軍刀だった。騎士の剣というに相応しい風格を有しており、アルフレートですらそれを見て懐かしさと同時に「ほうっ」と感嘆の溜息をつく。
そしてアルフレートに手渡されたその剣はフリードリヒ三世の宝剣を素体とした十一年も前に死んだであろうベアトリス・キルヒアイゼンの聖遺物であった。

「何、で……?」

アルフレートは興味深げに反応しただけだが螢はそれをみて驚愕した。姉のように慕っていたベアトリスの剣がトバルカインの剣に取り込まれていた。それが意味することを予想してしまい彼女は愕然とする。

「さあ、十一年前にこの町に居なかった僕には分からないけど、君なら分かるんじゃないかな?」

そう、呪を持つ剣に取り込まれていた。少なくとも櫻井螢はそこから推測できる出来事は一つしかなかった。

「嘘よ!兄さんがベアトリスを殺すなんて…そんなの絶対、認めないッ!!」

櫻井螢という人物は誰よりも諦めが悪い。だからせめて彼を
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