第百九十四話 長篠城の奮戦その四
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「左様か、それではな」
「設楽ヶ原においで頂けますか」
「殿にお伝えせよ、その場でお会いいたしましょうぞ」
「ではすぐにその様に」
早馬で来た旗本も頷いて答える、そしてだった。
馬場は自身の言葉通り長篠には抑えの者だけを残してそのうえでだ、多くの者を連れて戦の場に向かった。だが奥平はそれを見てもだ。
安心せずにだ、兵達に告げた。
「ここで下手に攻めてもな」
「そうしてもですな」
「武田の兵は強うございますから」
「攻めはせぬ」
籠城しているままだというのだ。
「このままな」
「そして殿をですな」
「お待ちするのですな」
「殿をお迎えする用意はする」
それは、というのだ。
「しかしな」
「はい、攻めずに」
「守ったままでいましょうぞ」
兵達もそうするのだった、長篠城は虎口を脱したがそれでも油断せずにだった。籠城し家康を待ち続けた。
信玄は前を見据えて進軍していた、その中で。
次々に己の下に来る忍達の報を聞いていた、その報はというと。
「ふむ、上杉はか」
「はい、越中からです」
「能登に入ろうとしております」
「そしてそのままです」
「金沢城に向かっております」
「左様か、では我等が先に都に入りな」
織田を破った後で、というのだ。
「上杉も破るぞ」
「次は、ですな」
「上杉ですな」
「どのみち織田を倒す為だけの盟約じゃ」
このことは信玄だけでなく謙信もわかっていることだ、実際に盟約は織田が倒れるまでとはっきり書かれている。
「そしてその後でな」
「北条も、ですな」
「あの家も」
「織田を倒したなら甲斐と駿河に兵を幾分か戻し守りとする」
その北条の守りであることは言うまでもない。
「そして北条も倒しな」
「天下を治める」
「一つにしたうえで」
「その正念場じゃ」
これからはじまる織田との戦はというのだ。
「いきなり大きな戦じゃ、しかも相手は織田信長じゃ」
「御館様はいつも仰っていますな」
信繁が兄に言って来た。
「織田信長、かなりの傑物だと」
「その通りじゃ、だから片腕にと考えておるのじゃ」
「上杉謙信と共に」
「率いるは二十万、確かに多いが」
それでもだというのだ。
「我等は勝つぞ」
「はい、それでは」
「これより」
「うむ、設楽ヶ原に向かうぞ」
「織田は多くしかも」
山本が言って来た。
「鉄砲も多いですな」
「おそらく四万はあるな」
「はい、猿飛からの報ですが」
ここで幸村が答える。
「鉄砲は五人に一人が持っております」
「そうじゃな、二十万でそれだけだとな」
「四万になりますな」
「よくもそれだけ持っておるものじゃ」
その四万の鉄砲をというのだ。
「我等ではとてもそこまで持っておらぬわ」
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