暁 〜小説投稿サイト〜
美しき異形達
第三十六話 古都においてその三
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「松平健さんや北島三郎さんが撮影してたのよ」
「まさにその場所で」
「それであそこがね」
 向日葵は少し離れた場所を指差して裕香にこうも言った。
「必殺の場所よ」
「中村主水の」
「そうそう、あそこでも撮影してたから」
「藤田まことさんがおられたのね」
「そうなのよ、ここを色々な人達が歩いていたのよ」
 様々な役者達がだ。
「スタッフの人達と一緒にね」
「歴史ある場所なのね」
「映画やドラマのね」
「そうした場所なのね」
「そう思うと凄いわよね」
「うん、何か」
 裕香は感慨と共に言った。
「私も時代劇の世界に入ったみたい」
「そう思えるでしょ」
「うん、ここにいたらね」
「それがいいのよ」
「映画村にいたら」
「江戸時代の中にいた気分にもなれるから」
 それで、というのだ。
「ここはいい場所なのよ」
「何か普通にね」
「普通に?」
「私町娘になりたくなったわ」
 江戸時代の、というのだ。
「そうも思えてきたわ」
「じゃあ町娘になってみる?」
 向日葵は裕香の今の言葉に笑顔でこう提案した。
「実際に」
「あっ、そうした格好になって」
「そう、どうなの?」
「お金かかるわよ」
「それはね」
 当然としてだ、向日葵は裕香の質問に答えた。
「やっぱりね」
「そうよね、じゃあ」
「止めるの?」
「他にもお金使うことあるし」
「この旅行の間で」
「ええ、何か結構お金がかかりそうな気がするから」 
 裕香はこのことを本能的に直感したのだ、この辺りの直感は彼女も持っているのだ。
「それでね」
「止めておくのね」
「今回はね」
「じゃあ今度ここに来た時に」
「考えてみるわ」
 こう向日葵に答えるのだった。
「またね」
「そうなのね」
「そう、それとね」
「それと?」
「お白州あるわよね」
 裕香は微笑んでだ、向日葵にこう問うた。
「映画村に」
「大岡越前や遠山の金さんで使われる」
「あそこね、勿論よ」
 あるとだ、向日葵は裕香の問いに微笑んで答えた。
「あるわよ」
「そうよね」
「実際に撮影で使われてきたね」
 その大岡越前や遠山の金さんにだ。
「あるわよ」
「それじゃあね」
「あそこにも行くのね」
「行こう、今から」
 裕香は目を輝かせてだ、向日葵だけでなく他に皆にも言った。
「実際に観たいわ、お白州」
「何か裕香ちゃんって時代劇好きなのかね」
 薊ははしゃぐ裕香の言葉を聞いてふと思った。
「さっきからえらくハイテンションだけれど」
「時代劇とか特撮とかね」
「東映の作品はか」
「好きなのよ」
「だから今そんなにはしゃいでるんだな」
「そうなのよ」
「そうか、そういえば関東だとな」
 薊は裕香の笑顔での言葉を聞いて
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ