Prologue A
[2]次話
混濁する意識の中。認識できるのは、自分の姿すら見えないほどの暗い闇の中にいることだけ。自分がいつからここにいるのか、自分がどうやってここへ来たのか、自分が一体だれなのか。わからない、知らない、考えられない。いつの間にか、この一縷の光も入らない暗闇の大海に浮かんでいた。
ふとあるイメージが浮かんできた。それは赤い宝石が縁取られた半球型の首飾り。見ていると温かいものが広がる。それはお守りとしてもらった物であり――形見だ。己の無力の為に守れなかった、己の無力の為に殺してしまった――母の。
思い出した。母を弟を守れなかった事、己の無力さを悔いた日々を、絶対的な力を求めた日々を思い出した。そして激情が駆け巡る。母を亡くしたあの日からなくなることのなかった自責の念が、力への渇望が、その者を苛んだ。引き裂かれそうなほどに苦しかった。何かは分からなかったが、ただただ苦しかった。
狂いそうな苦しみ中、一縷の光すらなかったこの暗闇にまばゆい光が現れた。それが一体なんなのかは分からなかった。しかし必死にその光りを掴もうとした。それが自分が求めていた何かのような気がしたからだ。
必死にもがいてもがいて、何度も手を伸ばした。なんとかその光を掴んだ瞬間、意識が消えた。彼が最後に見たものは――赤い三つの光だった。
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