暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
七章 「夜に二人」
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しい。
「今現在の所で坂井悠二――、つまりこの身体の元の持ち主の事を認識できているのは、俺達だけだよな」
「そうね」
 素っ気ない! だが一々気にもしてられないな。この年で禿げたくないし。
「それは、衛宮士郎――つまりは俺って存在が、坂井悠二っていう、元々ここに居た筈の存在を塗り替えてしまったから……、なんだよな?」
「何度も言ってるじゃない。そうよ、その通りよ」
「それじゃあ、シャナ。それにアラストール。アンタ達は俺が消えてしまったとして、俺の身体が坂井悠二だったって事は忘れてしまうのか?」
「この期に及んで、まだ他人の事を言うのね……」
 傘をチョイと上げて、端から睨んでくるシャナ。これまでの質問と同様に、軽く返されると思っていた。だが、シャナは睨みつけてくるだけで口を濁していた。
 そんなシャナの代わりに、俺の問いにはアラストールが答えてくれた。
「いや、我らはこの世の流れからは外れた存在だ。我らは起こった事そのものを感じ取り、認識する」
 だが、アラストールの説明は小難しくて、わざわざ噛み砕かなくちゃならない。ええと……、つまり。
「つまり、フレイムヘイズは別って事か?」
 再び傘で顔を隠したシャナがその影から言う。
「でも結局、そんな事はこれからの出来事に埋もれるわ。昨日の晩御飯を忘れてしまう様にね」
 失礼な、まだまだそこまではボケてない。と言うか、それは自分で自らの墓穴を掘ってないか? シャナさんよ。
「彼が居た、という真実を知っている人がこの世に一人でも居てくれるなら、せめてもの弔いになるんじゃないかってさ。本当は俺がその責務を負うべきなんだけどな」
 俺は消えてしまうからそれも叶わない、と付け加える。シャナから返事はなかった。
 俺と同じ様に感慨に耽ってくれているのか、それとも本当にどうでもいいのか、俺には分からない。
 けど何も感じないなんて、少し寂しくないか? そんな感じの事を考えながら、シャナの隠れている傘を眺める。不意に、カップに口を付けたであろうシャナが叫びを上げた。
「砂糖ッ!」
 それを聞いて、少々驚く。確かにあの昼飯と間食を見ていて、シャナが甘党であろう事は容易に想像できる。だが、それでもだ。
 ―――まだ苦かったのか?
 確かに豆は既製品だけど、それでも砂糖を三本は入れた。これ以上甘かったら、別の飲み物になると思うんだが…。
「ちゃんと入れたぞ?」
 そう言いながら、リュックから予備のスティックシュガーをもう三本ほど取り出す。なんだかんだで、こういう展開を予想して準備していた自分を褒めたいね、俺は。
 スティックシュガーをシャナに差し出しながら、ついでに揺さぶりをかける。困っている相手に手を差しのべながら交渉……。汚い、流石士郎さん汚い。伊達に、英霊になる危険を持ってない
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