”狩人”フリアグネ編
七章 「夜に二人」
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だ。本当にすまない」
「我等の為すべき事が偶然にも、貴様の利害と一致しただけだ」
アラストールの返事も実務的ではあったが、シャナの突き放すような物言いとは異なるものだった。
今日一日を通じて分かったが『天壌の劫火』なんて物騒な名前の割に、アラストール自身は別に荒々しい気性ではないらしい。
まぁ、こっちの世界のバランスが同胞に崩されかかっているのを憂いで戦ってる様な奴だしな。相当のお人好しなんだろう。
「それは、そうなんだろうけどさ。俺が言いたかっただけなんだ、アラストール。それにしても、こんな雨の中で警戒しなくても良いんじゃないか」
言いながら屋根の上に登る。アラストールには悪いが、会話のワンクッション代わりにさせてもらった。無論、お礼は本心からだけどな。
これで割りと自然な形で屋根に上がれた筈だ。さっさと引っ込めと言われたが、上がってしまえばこっちのもんだ。
なんだよ濡れてて歩きづらいな、と愚痴を漏らしながらシャナの隣に行く。片手に持っている傘が、シャナの傘とぶつからない様に間隔を取りつつ座った。少々ズボンが濡れたが、別に構わない事にする。
観念したのか、シャナは俺を追い出そうとはしなかった。実を言うと、屋根から蹴落とされるんじゃないか、と内心で警戒していた位だったからな。
それどころか、シャナは足を閉じて座り直した程だ。まぁ、今更な事なんだが。
不可抗力で見てしまっていた事がバレたらどうなるか……。背中に背負っていた、差し入れの入ったリュックを置く。ふと脳裏に、大太刀に両断される自分の姿が思い浮かんだ。
―――きっと有無を言わさずブッタ斬られるんだろうなぁ。
想像の中だけでも五回程シャナに殺され、思わず身震いをしてしまう。落ち着け、落ち着くんだ士郎。これは想像だ、現実じゃない。
「貴様の気にする事ではない」
アラストールの声で現実に引き戻される。自分を落ち着かせる意味も含めて、一息おいてから頷き返した。
「まぁ、そうだけどさ。そう言えば、もう少しだけ訊きたい事があるんだ」
そう言いながら、リュックの中から魔法瓶を取り出す。貢ぎ物だよ、貢ぎ物。交渉の必須アイテムだからな。
「………?」
シャナは無言で、こちらを睨んでくる。そう心配しなくても、毒なんて入れてないって。
肩に傘をかけながらだったので、少し慎重に中身をカップに注ぎ込む。そのまま、雨水が入らないように傘で隠しながらシャナに差し出した。
「差し入れだ、コーヒーだけどな」
先程までとはうって変わり、特に拒まれる事もなくシャナは素直に受け取ってくれた。少しは機嫌を直してくれたかな? 現金な奴め。
「で、何が訊きたいの? コレの代金程度なら答えてあげるわ」
そう言いながら、シャナは傘で顔を隠す。前言撤回、やっぱり機嫌は悪いら
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