序・黒子君は冗談が苦手なんです
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初めはただの違和感だった。
火神の家に泊まることなんて、黒子にとっては珍しくもなんともない。ほかの誠凛メンバーにしたってそうだが、黒子の場合はそこに『恋人だから』という理由が加わる。
その日も、火神の家で録画したDVDを見るついでに泊まったのだ。
先も述べたとおり、それはいつもとなんら変わらない。
問題は、起きた時の違和感だ。
なんというか、大きい皮をかぶっているような気がする。
客用布団の中でいろいろ考えてみるが結局わからず、とりあえず起きようと黒子は体を起こした。
「え?」
そして違和感の正体が浮き彫りになる。
「おお、目線が高いです…!」
黒子の背が驚異的に伸びていた。
下手をすれば、火神より高いかもしれない。
「でも、どういうことでしょう」
(とりあえず、火神君に突撃かけますか。キッチンにいないということは、きっとまだ寝ているでしょうから)
キッチンで朝食を用意するいつもの風景を思い出してくすりと笑い、火神の寝室へ向かう。
「火神君?まだ寝てますよね?」
小さく声をかけてみるが反応はなく、熟睡しているようだ。
そこで、黒子の中にふつふつとイタズラ心が湧き上がってきた。
(せっかくボクだけが泊まる日だったのに、放っておかれました。あげく、別々の部屋で客用布団なんて。火神君のバカ。イタズラしてやります)
ひと通り不満を並べながら火神を覗き込む。
起きているときは見上げる位置にあって鋭い目つきも、ベッドに横になって閉じていると和らいであどけなく見える。
(まあ、背だって今ならボクが見下ろせますし!)
微妙に張り合ってみる。
でも…、と、火神の頬を軽く撫ぜる。
ん、と小さく身じろぎするが起きる気配はない火神に気を良くして、親指でふにふにと唇を触ってみる。それでもまだ眠り続ける火神がだんだん面白くなってきた黒子は、がばっと火神に馬乗りになった。
「んぅ…おもい…?!」
「ようやくお目覚めですか、火神君」
火神はさすがに目を覚ましたが、黒子を見て絶句する。
「なんかお前、でかくね…?」
「そうですね、火神君よりも大きいです」
「ところでよ、なんで乗ってんだ?」
「火神君がなかなか起きないので、イタズラしてやろうかと。ただし性的な意味で」
「?!」
宣言してから黒子は涼しい顔で火神の頬を撫ぜ、そのまま首筋を通り、鎖骨に指を這わせた。
「いつもはボクが女性役ですから。たまには火神君にも体験してほしいと思って」
「ひぅっ」
そういって耳にふっと息を吹きかけると、火神は何かに耐えるように身を縮めた。
「ふふ、火神君、耳弱いんですか。いいことを知りました」
つづけ!
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