”狩人”フリアグネ編
六章 「狩人」
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いをして欲しかった所ではある。
黙り込むシャナを見て、フリアグネは笑みを見せた。
相棒を笑うフリアグネを見る羽目になったアラストールが、相変わらず低いままの声で答える。
「――なる程。最初に『燐子』を当てたのは、我らの力の程を見極めるためか。噂通り、姑息な狩りをする」
さっきの反撃か、辛辣に皮肉るアラストール。しかし、それを受けても尚、フリアグネの笑みは崩れなかった。
「いやいや。昨日の戦いの顛末を聞いて、さほどの危険は無いと踏んではいたよ? 今日の様子見は、あくまで念の為さ。私のマリアンヌの意思でもあったからね」
そう言って再びマリアンヌを見つめるフリアグネ。
「昨日の恥を雪ごうとしたのですが……。返って無様を晒してしまい、申し訳ありません、ご主人様」
「うふふ、だから、それはもういいって言ったろう?」
頭を垂れる人形の髪に、フリアグネは軽くキスをする。
あー、いちいちベタベタするなよ全く。それが狙いなんだろうけど、調子が狂っちまうだろ。
「流石に、剣一本でここまでやるとは思わなかったけれど……。まぁ、所詮はそれだけの事だね。ただでさえ、人の内に入って窮屈だというのに、契約者も貧弱。君の『王』たる力も、まさに『宝の持ち腐れ』だね」
「―――貧弱かどうか、見せてあげるわ」
シャナは灼眼の光を強め、身構える。
お前もだシャナ。いちいち挑発に乗るな。敵の思惑通りの行動をしてやる義務はないんだぞ。
直接、口に出す訳にもいかないので、ひたすらシャナに視線を送る。残念ながら気付いてくれてはいないが。
そんなシャナを一瞥し、フリアグネは駄々をこねる子供に対するように、ため息をつく。
「喧嘩の押し売りかい? 無粋な子だなぁ……。私は、そういう風にムキになったフレイムヘイズが、力を暴走させて爆死するのを何度も見ているんだ。そんな事になって、そこのミステスが中身ごと壊れたら、私の真名“狩人”にとっては本末転倒なんだよ」
そう言ってフリアグネは、ここに来てようやく俺に視線を向けた。
「別に急ぐ事もない……。もう少し、やりやすい状況を準備してから、また伺う事にするよ」
だがその視線は俺という『個人』ではなく、俺という『容れ物』の中にある宝具を見ているようだった。
「何が入っているんだろう、その内には。うふふ、楽しみだね……」
そう言い終えると、フリアグネとマリアンヌは去っていった。
気味の悪い奴だ、ゾッとするな。特に最後、俺に向けた視線……。眼が笑ってなかった。
「やはり、ただの徒ではなかったな。王それも“狩人”フリアグネとは」
「ふん」
相変わらず重いままの声のアラストールに、シャナは鼻を鳴らして返す。
炎を出せない事を馬鹿にされて、機嫌が悪いようだ。
「あいつが敵の親玉って事だな」
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