”狩人”フリアグネ編
六章 「狩人」
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接戦も出来ない。
爆発とタイミングを合わせて後退する。それと同時にシャナに叫ぶ。
「今だ、シャナ!」
言われずとも、と自由になった大太刀をシャナは振りかぶった。
「っだあ!!」
シャナは巨躯に大太刀を叩き込む。
―――で、お決まりの最後だろ?
今度ばかりはコートに防いではもらえないだろう。倒れ込むように床に伏せる。爆風をやり過ごさなければならない。
両腕を粉砕した際の爆発は、かなり小規模の物だった。幾ばくか希望的な観測ではあるが、恐らくあれが爆発しても後方の壁に被害はない筈だ。
程なくして爆発。背中を叩く爆風の感覚は、確実に最初の物より小規模だ。これなら、なんとか保ってくれるだろう。
爆発が収まったので、ゆっくりと体を起こす。
体を起こした俺の眼前には、贄殿遮那の切っ先にぶら下がる人形があった。
その姿は、焼け焦げ、ちぎれ、見るも無惨な姿になっている。
「なんか、さっき見たような光景だな。そこまで悲惨じゃなかったけど」
思わず俺は感想を漏らす。
「そうだったかしらね。 きっと、刺されるのが好きなんじゃない?」
簡単にシャナは答え、人形を床に放り落とした。
「で? お前の主の名は?」
冷たい口調のシャナに、人形は答えた。音飛びのするCDのような途切れた声ではあったが。
「わ―――たシ、が―――言――うト、思―ウ? フれ――イ――むヘイ、ず」
期待なんかしてないわよ、と一蹴するシャナ。
「ただの確認よ。でも、無駄駒をチョロチョロ出し惜しみする様な、よほどの馬鹿なんだろうけど」
「―――う、グ」
人形はあからさまな嘲弄に声を詰まらせる。全く、どっちが悪者か分からない。
もう用はない、と人形にトドメを指そうと大太刀を振り上げるシャナ。
しかし、窓の外からの声に動作を急停止する。
「無駄駒だって? いやいや、有益な威力偵察、と私としては言って欲しい物だね」
俺とシャナは、殆ど同時に声のする方向を見ていた。
―――新手か!
視線の先には、長身の男が浮いていた。
夕焼けの赤にも、封絶の色にも染まらない、純白のスーツ。その上に羽織られた長衣。さながら幻想世界の住人を彷彿とさせる違和感を放つ存在がそこに居た。
「こんにちは、おちびさん。逢魔が時に相応しい出会いだ」
調律の狂った弦楽器のような声で、乱入者は挨拶をしてきた。
「こいつが………徒、か」
俺は思わず呟いていた。直感で分かる、コイツは存在その物が違和感の塊だ。
何て言うか、自然に不自然な存在……か? そこに居るのは別に普通なのに、普通じゃない。違和感を覚えない事が、逆に変な感じだ。
そんな事を考えていると、シャナが男に凛とした声で返す。
「あんたが主?」
「そう…、『フリアグネ』それが私の名だ」
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