暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
六章 「狩人」
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投影開始」
 用意するのは夫婦剣。不具合が発生していない宝具で、戦闘用なのはこれだけだ。
 無論、慣れ親しんだ武器だから、というのが一番の理由ではある。だが、なかなか実体化しない。やはり、投影の精製速度があまりにも遅いのだ。
 武器を用意しながら、周囲を警戒する。敵はまだ来ていない。何故だ?
 封絶という空間干渉の性質上、完全な形の奇襲はあり得ない。何せ、俺の様な素人目でも一目で封絶の展開を察知出来てしまうのだ。ばか正直に、これから襲撃します、と宣言してからやって来ていると言って過言でない。事前準備はともかく、心理的優位に立たれない、というだけでも幾分かは気が楽だ。
 シャナは依然、机上に立っている。堂々たる迎撃戦の心持ちである事は端から見ているだけで感じ取れた。
 教室が緊張に包まれる中、不意に窓の外に一点、何かが浮かび上がった。
 あれは―――、何かのカードか? 封絶と夕陽の赤に染められ、ここからでは真っ黒な札にしか見えない。
 視力を強化したい所だが、生憎、今は夫婦剣を投影中だ。並列処理なんて器用な真似は出来ない為、目を凝らして確かめる。

 やっぱりカードだ。それもトランプ―――だな。封絶で周囲は静止している為、生徒の物ではないだろう。つまり、あれは敵によるものだ。何らかのメッセージ――、いや、一枚じゃ分かりづらいし、この状況ではその可能性は低い。
 あれは―――、攻撃か!?
 考えている間に一枚の筈のカードは次々と増える。宙を固まって舞い、あっという間に窓の外を埋め尽くした。途端、カードはシャナを………、いや、こちらに目掛けて突撃してくる。
 カードの怒涛は、窓枠やガラス、壁をも砕いた。その様はカードの雪崩れと言って良いだろう。
 夫婦剣の投影はまだ済んでいない。しかし、回避すれば後方の壁を破られる。あの壁だけは死守しなければならない、
 だが、相手はただのカードではない。壁をも砕く立派な凶器だ。シャナはともかく、俺が身体で受ければただでは済まないだろう。
「―――っ!」
 避けるのか、それとも避けないのか? 躊躇していた挙げ句、俺は何も出来なかった。
 カードに身体をミンチにされるイメージが脳を駆ける。
 すると、シャナはコートを伸ばす。さながら盾の様に。ただ一直線に突撃を敢行するカードはそのコートに進路を妨げられた。
 機関銃の如くコートに突き立っていくカード。しかし、それらは触れたそばから燃え上がり、裏に一点の穴も開けられない。持ち主の意思で伸縮可能かつ、防御能力も高い。良い防具だ。
 その間にシャナは、カードの怒涛の根源に狙いを定め、太刀を構える。切っ先を敵に向け、腰を落とす。シャナ自身が弓で太刀が矢、その姿を、さながらを弓矢に見立ててしまう。
 そこで思い出す。昨日の首玉は最後どうなったか?

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