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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第109話 蓮の花
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 この場にいないSOS団関係者以外の、球技大会で野球にエントリーしている二人の男子生徒の姿形を思い出して見る俺。
 ふたりともごく普通の男子高校生。多分、何かのスポーツ系の部活動には参加して居ると思う。但し、此の手の学校内行事の常として、それぞれの部活関係者。例えば、バスケット部の部員がバスケにエントリー出来ないと言うルールから判る通り、この二人は野球部員ではない……ハズ。
 一人目は、上調子のただ賑やかなだけの人間。ホームベースのような頬骨の張った顔が特徴。名字で呼ばれる事はなく、クラスメイトからはただ潔と名前で呼ばれている人物。
 もう一人は――蟹。コイツの顔の正面に間違いなく死角が存在しているだろうと言う、目と目の間が異様に広い特徴的な顔を持つヤツ。こいつはどうにも底意地が悪いらしく、クラスメイトからも嫌われている人物。

 何と言うか、他の競技。今回の球技大会では野球の他にサッカー。バスケ。バレー。卓球の中から、好きな競技ひとつだけにエントリー出来るのですが、他の競技のメンバーから嫌われて、同じように敬遠されたハルヒの関係者の所に押し付けられた、と言う曰く付きの二人組。
 こんな連中をハルヒがわざわざ練習に……。

「そんな連中、来ないわよ」

 俺の内心の不安通りの答えを返して来るハルヒ。
 そして、更に続けて、

「そもそも、あいつらに、全員で集まって練習をする、……とは言っていないもの」

 もっとも、本当に練習する心算があるのなら、このグラウンドの使用時間はクラス毎に決められているんだから、わざわざ教えられなくても自分から来る事だって可能なのに、この時間になっても来ていないんだから、変な期待なんかしないで二人とも居ないもの、と考えた方が良いわよ。

 ある意味では正論であろう、と言う内容で押して来るハルヒ。
 確かに、それはそう。学校側が用意したグラウンドですから、一日中、ずっと俺たちが占拠しても良い訳ではない。当然、時間は決められており、そのスケジュールに従って、俺たちは練習する時間を決めたのですから……。
 あのふたりに練習をする心算があるのなら呼ばれる前にやって来るか、もしくは練習をしないのか、と言う問いを発するぐらいなら出来たはず。それをしなかったのはヤツラですから……。

「さぁ、来もしないモブの事を考えている暇はないわよ!」

 そう言った瞬間、手にしていたボールを良く晴れた……雲ひとつ浮かんで居ない氷空に向かって打ち上げるハルヒ。
 ノッカーとしてもっとも難しいと言われるキャッチャーフライ。
 何処までも深い。果ての見えない氷空に昇って行く白いボール。

 但し、俺の心は何故かその氷空ほどに明るい物ではなかった。


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