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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第109話 蓮の花
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だ、俺は百回同じ動きを行って、百回同じように成功し続ける自信は有るのですが。そのぐらいの自信がなければ、刀を握って、戦いの最前線で生命のやり取りが出来る訳が有りませんから。
 頭で思い描いた動きを、身体が完全にトレース出来る。これぐらいに成って居ないと生命が幾つ有っても足りません。

 もっとも、そんな事を実際に言葉にして反論しても意味のない事。まして、ハルヒは俺の運動能力が通常の人間のレベルで計る事が出来ない存在だと知らないのだから、いくら言葉を費やして説明したとしても信用しないでしょう。

「そうしたら、最後はキャッチャーフライを打ち上げてシートノックは終わり。次はフリーバッティングをやるから――」

 そう言ってから、右手にボール。左手にバットを持ったままグラウンド内を見渡すハルヒ。そうして、俺の顔をもう一度見つめ直し、

「バッティングピッチャーはあんたがやりなさい」

 ……と何時も通りの命令口調でそう言って来る。
 ただ……。

「そりゃ、バッティングピッチャーだろうが、なんだろうがヤルのは構わないが……」

 俺もハルヒに倣って、狭い……視界的に言うと見晴らしの良い河原。三塁側に平行するように走る堤防の上には道路が。外野の更に向こう側には河が存在する練習用のこのグラウンドを見渡す俺。
 バッターボックスにはハルヒ。キャッチャーの位置には完全防備の有希の姿が。
 ファーストには万結。セカンドには俺。ショートには朝倉さん。サードは弓月さん。これで内野の布陣は完璧。

 一塁側のベンチにはやる事もなく手持無沙汰なチアガール姿の朝比奈さん。まぁ、彼女の役割は応援だけですし、あんな肌を露出した姿で野球をして貰う訳にも行かないので、ぼんやりと見ているだけでも十分でしょう。

 しかし……。

 其処から外野に目を向ける俺。
 センターの位置には普段通り、やや不機嫌な表情で胸の前に腕を組んだ姿勢の相馬さつきが仁王立ち。尚、何故か彼女だけはボトムは北高校指定の冬用の体操服姿なのですが、上に関しては夏用の白い体操着を着用。
 吹き晒しの真冬の河川敷で豪気な姿。……なんと言うか、子供は風の子とでも言いたいのでしょうか。

 ここまでは普通の野球の守備位置。
 しかし、ここから先が異常。
 何故ならば、ライトとレフトの位置には乾いた冬の風が吹くばかりで、猫の子一匹存在する事はなかったのですから。

「本格的な練習をするのは、ライトとレフトが来てからでも十分やないのか?」

 ランナー役がいないシートノックと言うのもアレなのですが、その辺りは無視をするとして……。かなり問題はあるけど無視をするとして、もっと問題のあるハルヒの言葉にそう反論を試みてみる俺。但し、その中に存在する一抹の不安。
 それは―
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