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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第109話 蓮の花
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等しい。まして、この窓の向こう側には悪い魔法使いに封じられた宝物が眠って居るはずですから。
 ゆっくりと開いて行くバルコニーに面した窓を見つめながら、そんな、少しファンタジー小説の読者じみた感想を思い浮かべる俺。

 もっとも、幼い頃の俺は今よりも一層華奢で、更に肌も白い少年。まして、この夢の世界の俺はガリア王家の血筋を引いた女性。王家の血筋を絶えさせない為に作られたスペアの家系の女性を父親が娶った事により、ガリア王家の証……蒼い髪の毛を持つ少年として育って居た。
 どう考えても地球人類には存在しないだろうと言う髪の毛の色と、それに相応しい容姿を持つ少年。そんな人物が実際に目の前に現れて居たとしても実在感は薄く、画面の向こう側を覗き見しているようにしか思えなかった、と言う事。

 そう考えた瞬間、一陣の風が吹き付け、やや伸びすぎた感のある前髪を弄る。
 刹那、移動を開始する俺の視点。月が自らに触れる雲を白く染める氷空から急速降下。淡い月光が輝かせる西洋瓦に覆われた屋根を下り、オルレアン屋敷の三階、西の端に存在する彼女の部屋のバルコニーに降り立ち。
 そして……。

 見慣れた配置。この部屋の属性を決める本棚を埋めた書物の数。部屋には明かりの類はなく蒼い闇。その中心。丁度、俺の背中から差し込んで来る月明かりが届くか、届かないかのギリギリの場所に設えられた天蓋付きの寝台。ただ、今宵は紗のカーテンが閉じられる事はなく――

 耳が痛くなる程の静寂。その静寂の世界の丁度中心。寝台の上に上半身のみを起こした形でこちらを見つめる少女と今、視線が交錯する。
 こちら側。その彼女の蒼き瞳が見つめているのは間違いなく幼い頃の俺の方。しかし、何故か、この夢の主人公たる幼い俺の背後に浮かぶ霊体の如き俺を見つめている。そんな風に感じる瞳。
 すぅっと。まるで透き通ったかの如き鼻梁。薄いくちびるからは貴族として相応しい品の良さを感じさせる。

 見た目は十歳程度。ここまでは俺……ハルケギニアに召喚された武神忍と言う偽名を名乗る少年が知っている彼女の幼い頃と同じ容姿。
 しかし、ここから先が違う点。何も遮る物の存在しない瞳。俺の知っている彼女の容貌を語る上で重要なアイテム。紅いアンダーリムの存在しない蒼の瞳。ロング……と言うほど長くはない。セミロングと言うぐらいの長さの蒼の髪の毛。

 最後に、何より今の彼女から俺が感じている雰囲気が違う。
 俺の知っている彼女は静謐な。かなり落ち着いた雰囲気の中に、凛とした強さを感じさせる少女でした。
 しかし、今、寝台の上から俺を見つめる少女から感じるのは……。

 虚無――

 そう考えた正に、その刹那。それまでと違う何かが彼女より発せられた。
 何とは表現し難い雰囲気。懐かしい。とても懐かしい
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