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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第109話 蓮の花
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れは多分、夢。そもそも、十歳前後の頃の俺は仙術を習う以前。未だ実家の神職の修業は行って居たけど、それも今ほどの能力を示す事も出来ない、……見鬼の才には恵まれて居たけど、それでも、ごく平凡な術者と成る程度の才能だったはず。俺の視界の中に存在する蒼髪の少年と比べると月とスッポンと言うぐらいの差があったでしょう。
 当然、今現在の俺の記憶にある十歳前後の俺は、黒髪……ではなく、濃い茶系の髪と瞳を持つ、何処にでも居るような一般的な日本人の少年であった事は間違いない。

 豪奢な彫刻に手を掛け、神殿風の柱を蹴り、目的地のバルコニーに降り立つ幼い頃の俺。そして周囲の物音と気配を感じた後に、ゆっくりとガラス窓越し――カーテンにより視界を遮られた室内を覗き込んだ。
 いや、これは別に室内を覗き込んだ訳ではなく、おそらく施錠の有無を確かめただけ。
 確かこの時は――

 微かな記憶を頼りに、この時の次の行動を思い出そうとする俺。但し、本当に思い出して居るのか、それとも妄想……この次の行動がそうだったと思い込み、夢の続きの展開を作り出して居るのかは判らない状態なのですが。
 疑り深い俺に相応しい思考。そんな、イレギュラーな観客が居る事に気付く訳もない幼い俺が、自らの胸のポケットへと手を差し入れる。

 そして……。

 そして、胸のポケットから取り出すカードの束。その中の一枚を掲げ、宙に光の線で印章を描く。

 そう言えば、この時は今の俺よりもずっと多い式神を友と為して居たはず。つまり、今現在の俺の許容量は自分がそう思い込んでいる限界であって、本来はずっと多い式神を友と出来ると言う事なのでしょう。
 現在、目の前で展開して居る事態が、かつて俺であった存在の記憶であったとしたのなら。

 夢見る者の俺の思考が少し脇道に逸れた事に気付く訳もない、もう一人の俺。幼い頃の俺の掲げた右腕の先に浮かび上がる光輝の召喚円。
 ――西洋風の印章。それも、ソロモンの七十二の魔将の特徴を持った印章が宙に描き出された直後、その場所には……。
 背中に白い羽根のある幼児……。髪の毛は金髪。体型は赤ん坊。西洋の宗教画に登場する天使や、ローマ神話にて語られるキューピッドと呼ばれる存在そっくりの幼児が、幼い頃の俺の側に現われて居たのでした。

 召喚円や、存在から感じる波動などから推測出来るソレと、記憶の奥底に深く沈められた思い出との照合。短い時間の後に出した結論。コイツは確かソロモン七十二魔将の一柱。その職能から、後のベレイトの事件……現在のタバサに召喚された俺ではなく、この夢の世界の俺が経験したベレイトの蛇神召喚事件の時にも活躍した魔将ヴァラック。すべての宝箱の罠を解除し、カギを開く職能を有するヴァラックに取って、ハルケギニアのロックの魔法を解除する事など児戯に
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