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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十話 包囲網
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帝国暦 488年 10月 4日 ヴァレンシュタイン艦隊旗艦 スクルド アントン・フェルナー
ヴァレンシュタイン艦隊はレンテンベルク要塞の方向に向かって航行している。旗艦スクルドの艦橋は重苦しい雰囲気だ。何と言っても出撃以来司令官のエーリッヒの表情が常に厳しい。乗組員達はそんなエーリッヒと視線を合わせないようにしながら時折チラっ、チラっと見ている。
エーリッヒが溜息を吐いた。
「少しはリラックスしたらどうだ。卿だけじゃない、クレメンツ提督も出撃しているんだ」
「嫌な予感がする。今直ぐガイエスブルク要塞に戻った方が良いと思う」
「気持ちは分かるがね、メルカッツ総司令官が困っているんだ。分かるだろう?」
また溜息を吐いた。俺も溜息を吐きたい。
ローエングラム侯が前線に出た。たちまち貴族連合軍の二個艦隊を撃破した。カルナップ男爵は戦死、ヘルダー子爵は命からがらガイエスブルク要塞に逃げ込んだ。ローエングラム侯の余りの強さに貴族達の間に動揺が走っている。
“戦力として当てにしているわけでは無いが徒に騒がれるのも困る。今後の戦いにも影響しかねない”。メルカッツ総司令官が嘆くほどだ。
オーディンで騒乱が起きればレンテンベルク要塞奪回のために出撃する。それをスムーズに行うためにも貴族達を落ち着かせなければならないというわけだ。そこで貴族連合軍最強のヴァレンシュタイン艦隊に出撃命令が下った。もっとも戦って勝つ必要は無いと言われている。ただ出撃して帰ってくれば良い、そうすれば貴族達も少しは落ち着くだろうと……。まあ二個艦隊撃破した後だ、ローエングラム侯はレンテンベルク要塞に戻った筈、出会う事は無いという読みもある。
エーリッヒは不本意だっただろうが総司令官の命とあれば従わないわけにも行かない。そしてクレメンツ提督が一個艦隊では万一という事が有るとメルカッツ総司令官を説得して共に出撃する事になった。二個艦隊、合計四万隻を超える大軍だ。エーリッヒに対して最大限の配慮はしていると思うのだが……。
十月一日にガイエスブルク要塞を出撃して以来特に問題は無い。敵どころか味方にも会わない状況だ。だがエーリッヒの表情は緩まない。睡眠はタンクベッド睡眠で済ませ艦橋から離れる事は滅多にない。明らかにエーリッヒは臨戦態勢をとっている。オフレッサーもリューネブルク中将もその事をからかう事無く大人しく控えている。それを強いられるほどにエーリッヒの表情は厳しい、緩まない。
またエーリッヒが溜息を吐いた。
「気が進まんのか?」
「ええ、進みません。どうも嫌な感じがする。少し神経質になっているのかな」
エーリッヒが答えるとオフレッサーが“フム”と言った。この二人、何時も正面を見たまま話す、相手の顔を見て話すという事が無い。
「
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