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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十話 包囲網
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「哨戒部隊から報告は無いか?」
「未だ有りません」
レッケンドルフ中尉が申し訳無さそうな表情で答えた。
「気にするな、中尉。卿の所為ではない」
「はあ」
益々申し訳無さそうな表情になった。やれやれだな、思わず苦笑が漏れた。
敵は出撃していないのだろうか? いや、それならローエングラム侯から連絡が有る筈だ。連絡が無いのは侯が敵の後方に居るからだろう。このままいけばいずれ俺とビッテンフェルトが前から、ローエングラム侯が後ろから敵を攻撃出来る筈だ。そしてワーレン、ルッツ、メックリンガー、ケスラーが両脇から包み込む。包囲網の完成だ、敵を殲滅出来るだろう。
ガイエスブルク要塞に居るのはブラウンシュバイク公、メルカッツ、クレメンツ、ヴァレンシュタイン、そして後は有象無象だ。出撃してくるとすればクレメンツ、ヴァレンシュタインのどちらか、或いは両方の筈だ。これを殲滅出来れば、特にヴァレンシュタインを倒せれば戦況は一気に変わる。ミッターマイヤーの仇も討てる……。焦ってはいかんな、焦ってはいかん。
「逃げたかもしれんな」
「敵が、でしょうか」
「うむ、敵がこちらに、或いはローエングラム侯に気付いたという事も有るだろう」
実際にその可能性は十二分にある。両脇にワーレン、ルッツ、メックリンガー、ケスラーを置いたのはその為だ。正面から迎え撃つよりもどちらかで補足する可能性の方が高いかもしれない。
「ですがその場合には」
「そうだな、左右どちらに逃げても補足される。後は皆で包囲して終わりだ」
「……なんというか漁師達が網で魚を獲っているようであります」
「面白い例えだ」
俺が笑うと中尉も笑った。確かに漁をしているような戦いだ。しかし相手は一筋縄ではいかない大物、場合によっては網を引き千切るかもしれんしすり抜けるかもしれん……。
「この銀河でも滅多に見ない大物だ。上手く引き上げたいものだな、中尉」
「はい!」
レッケンドルフ中尉が力強く頷いた。
帝国暦 488年 10月 4日 ヴァレンシュタイン艦隊旗艦 スクルド アントン・フェルナー
旗艦スクルドの艦橋は重苦しい沈黙に包まれていた。誰もが音を立てる事を極度に恐れている、そんな雰囲気だ。音を立てれば敵に気付かれる、そう思っているのかもしれない。まだ敵艦隊との接触は無い。既に艦隊は迂回を終えガイエスブルク方面に向かっている。
「逃げ切ったと思うか?」
小声で訊ねるとエーリッヒは首を横に振った。言葉は無い。相変わらずエーリッヒは張り詰めた表情をしている。後方のローエングラム侯は振り切ったのだろうか。振り切ったのだとすれば残りはメックリンガー、ケスラーの二人だ。なんとか出会わずに切り抜けたいのだが……。いやそれよりも本当に包囲網は有っ
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