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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十話 包囲網
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妙な男だな、卿は。新無憂宮を攻撃するほど大胆かと思えば臆病かと思うほど用心深い。どちらが本当の姿だ」
「どちらも私ですよ」
「……ローエングラム侯が怖いか?」
「怖いですね」
あっさり答えた。普通そんな風に答えるもんじゃないんだが。オペレータ達が眼を丸くしている。オフレッサーが俺とリューネブルク中将を見て肩を竦めた。困った奴、そんなところか。もっともエーリッヒからは見えない。

「恐ろしいと思う事は恥じゃありません。無意味に強がるよりは余程良い」
「……」
「私は戦いたくないと思う相手が何人かいます」
「……」
「ラインハルト・フォン・ローエングラム、ジークフリード・キルヒアイス、ヤン・ウェンリー、オスカー・フォン・ロイエンタール、ウォルフガング・ミッターマイヤー、アレクサンドル・ビュコック、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ……」
また三人で顔を見合わせた。いずれも名将として評価の高い人物だ。七人の内二人が反乱軍、一人が貴族連合軍、四人が正規軍にいる。正規軍が強い筈だ。

「ミッターマイヤー提督には勝ちましたな。キルヒアイス提督も閣下の作戦で斃しました」
「不意を突いて騙してね。そうでなければ勝てなかった。彼らと正面から戦えと言われれば逃げましたよ。勝つ自信なんて欠片も無かった」
リューネブルク中将の問いにエーリッヒは無表情に答えた。

俺ならあの連中よりもエーリッヒと戦いたくない。戦術能力の優劣は分からない、だが勝負に対する執着は誰よりも上だろう。ミッターマイヤー、ケンプ、キルヒアイス、いずれもエーリッヒにしてやられた。戦えば必ず勝つ、そこまで準備してから戦う。そして常に主導権を握って戦う。この内乱での勝ち方を振り返ればエーリッヒにはそんな怖さが有る。勝てる可能性が二パーセントと言っていた事を思えばその思いはさらに強まる。

エーリッヒが今回の出撃に不機嫌なのも勝つための準備が何も出来ていない所為だろう。勝つ必要は無い、戦う必要は無いと言われても納得が出来ずにいるに違いない。行き当たりばったりで主導権を取れない、自分のスタイルではない、そう思っているのだ。

「とにかく今日一日だ。今日一日レンテンベルク要塞に向かえばガイエスブルク要塞に帰還出来る」
「……私は今帰還したい」
そんな子供みたいな事を言うな。メルカッツ総司令官からは十月五日になったら帰還して良いと言われているんだ。時間にして後十時間程の我慢だ。

そう言おうとした時だった。
「司令官閣下! クレメンツ艦隊より入電です。後方の哨戒部隊が連絡を絶ったとの事です」
オペレータの報告が艦橋に響いた。エーリッヒは微動だにしない。いや、右手を強く握り締めているのが見えた。リューネブルク中将、オフレッサーは厳しい表情だ。クレメンツ艦隊は我々の後
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