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サンドイッチ
サンドイッチ
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……それは……」
 わたしでさえ考えたことだから、お姉さんはもっと早くに気づいていたと思う。わたしたち母娘が二人きりでツインルームを与えられていたことを知った時に。
「食料そのものが足りないわけではないから、あなたが心配することはないのよ」 
 最初に集められた時は無差別だったろうけれど、その後には脱出船の割り当てがあるからと名簿が作られた。わたしの父がドワイト・グリーンヒル中将であることがただちに知らされて、先に食事を提供されそうになったり、贅沢な部屋割りが行われた。
 そういえば昨日も自分の地位ならまだしも、親の地位で優遇されようとしていた人がいたわ。軍にたくさんの寄付をしている金持ちとか。
 そうか……きっとそんな人たちを見て、中将の家族であるわたしたちを皆と同じように扱えなくなったのね。
「昨夜もそうだけど、普通は黙ってベッドを占領しているものよ」
「あら、ではきっとわたしは普通ではないのね」
 ミルクと砂糖が入っていてもコーヒーはあまり好きではない。でも今はこれも我慢ね。
「わたしはいつも父に、有事こそ公私を区別し、私は捨てるべきだと言われているから」
「だとしても、あなたはまだ一四歳なのよ」
「もう一四歳だわ」
 わたしは胸を張った。
「だから食事の順番をきちんと待てるし、定員人数以上で眠るベッドが狭いと思っても、数が足りないのだから辛抱できる。こうやって猫の手程度でも手伝いだって」
 食事終了、とわたしは立ち上がった。
「まだ全員には配られていないみたい」
 調理室からサンドイッチを積んだワゴンが押されてくるのが見える。

「サンドイッチをどうぞ」
 わたしは中尉さんが食事はおろか、長い間腰を下ろすこともないのを見ていた。眉間にしわを寄せ、たまに頭をかき、書類にチェックを入れ、部下に指示を与え、苦情を訴える人には優しく応えているのを。
 驚いたような顔をしてわたしを見ているわ。
 わたしがグリーンヒル中将の娘だと知っているから? 将校の娘は非常時でも優遇されて当然なのに、サンドイッチを配っているのがそんなに珍しいの?
「ありがとう。君はもう食べたの?」
 その顔にはありありと疲れが浮かんでいるのに、わたしに笑いかけてくれる。この中尉さんはわたしが誰なのか知らないんだわ。
「私はまだおなかが空いていないし、他の人にあげてください」
 嘘つき、と思ったけれど、それは本当に思っただけ。誰も軍人に食事を運ぼうとはしていないし、どこかにこっそり豪華なランチを食べに行くところもわたしは見ていないもの。
「わたしはもう食べたから。具は卵とハムだけでもパンはここで焼いたからとても美味しいの」
 まだサンドイッチを受け取ろうとしない。
「軍人は体が資本でしょう? これも任務よ」
 最初よりも驚きに満ちた表
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