ハープニーングッ!
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のに、当たり前のことを聞いてしまった。
「…そうだけど。今からか?」
「はい。洗い物当番だったので」
「それは、ご苦労様…」
アーサーはそう言うと、すれ違って自分の部屋の方へと向かう。
(…別に普通の会話ですし…特別仲がいいというわけではないと思うのですが)
あんなことを言われたからか、そんなことをつい意識してしまう。
アーサーが通った廊下には、甘い香りが残っていた。
(……もう、フェリシアーノ君があのような事を言うから)
シャツを脱ごうと手をかけながら、さっきの会話のことを考えていた。
と、その時――。
ノックの音と同時に声がかかる。
『…ちょっといいか?』
(この声、アーサーさん!?)
「は、はい。どうなさいました?」
まさかアーサーが戻ってくるとは思わなくて、少し戸惑いながら答える。
『まだ着替えてなかったらでいいんだが……』
「はい」
『ちょっと開けてもらってもいいかな…』
(え?)
あまりにも驚いたからか、言葉を返すのが1テンポ遅れてしまった。
「あ…はい。ええと……どうかされたんですか?」
菊は急いで脱ぎかけていたシャツの裾を下す。
『いや…忘れ物をしたみたいなんだ…』
(…忘れ物?)
辺りを見回してみるけれど、どれがそれなのかわからない。
「もし、教えてくださるならお渡しいたしますよ?」
『……』
急にドアの向こうが静かになる。
「あの、アーサーさん?」
『…ローションなんだ。棚にある』
「わかりました」
呟いて棚へ向き直る。けれど棚にはいくつものローションが置いてあり、どれだか見当もつかない。
「すみません、たくさんあるので…今開けますね」
そう言うと菊は脱衣所のドアを開けた。カチャリという音とともに、アーサーの顔が覗く。
その瞬間、ついさっきすれ違ったばかりの、甘い香りがふわっと立ち上がる。
(あ…)
「どうかしたか?」
ついジッと彼を見ていたからか、アーサーが不思議そうに尋ねる。
「先ほども廊下で思ったのですが…その香りはシャンプーですか?」
「…?」
アーサーは首を傾げる。
「すごくいい香りがするなと思ったので……シャンプーの香りなのか、香水なのか…」
すると彼はフッと微笑んだ。
「さぁ……どうかな」
曖昧な顔をして、棚の方へと移動した。そして菊の横に来て棚を見上げる。
まだ濡れている髪に、湯船から上がったばかりの上気した頬。
目当てのものを探しているために、上目遣い送る視線。
(すごい、色っぽい…)
菊は洗面台からどくのも忘れて、アーサーの顔に見惚れ
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