第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
29.Jury・Night:『Ath nGabla』
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辿り着いたのは、二十時を過ぎてから。一度しか行った事の無い場所を探しだすのは、中々に骨が折れた。
一つ深呼吸、扉をノックする。暫く待っても、応答がない。聞こえなかったのかと、今度はインターホンを鳴らせば────とたとたと、走ってくる音。
間違いようもない、あの娘の足音。耳というより、鼻で感じる。ミルクのような甘い香り、神気臭い修道女の。
「あ、こんば────」
「もー、うるさいよ! とうまが起きちゃうんだよ!」
そしてやはり出てきた白い修道女は、ぷりぷりと頬を膨らませていて。
………………
…………
……
勝手知ったる人の家、卓袱台脇に腰を下ろしてそれを眺める。相変わらず布団に寝ている少年『上条 当麻』……には一瞥だけ、その眼差しは対面でモリモリ唐揚げ弁当を食べている禁書目録に向けられていて。
「ハハ、良い食べっぷりだ。これも食べるかい?」
「いいの?!」
「勿論」
実に気持ちの良い食べっぷりである。ウジウジ悩んでいた己が莫迦莫迦しくなる程に、幸せそうな表情で。
まだ手を付けていない自分の分と目覚めていない当麻の分、戦闘に行ったという『月詠 小萌』の分をも渡す。
「やったー! ありがとうなんだよ、こーじ!」
それを受けとると、モグモグと栗鼠かハムスターのように文字通り頬袋を膨らませながら食べて。
それを微笑ましく、喉に詰めたりしないように見守りながら、嚆矢は冷蔵庫から取り出した缶ビールを煽る。炭酸と、細胞に染み入る酒精の心地好さ。熱帯夜の熱気に蒸された体を内側から冷やす麦酒に、天魔色の髪を掻きながら微笑む。
──そうだ、やはり。見て見ぬ振りなど、俺にそんな権利は無い。俺は誓約を果たす。
喩え……それで、誓約に叛く事になろうとも。俺は────
グッと、頚から下げた『兎の脚』を握り締める。痛い程に強く、全体に刻まれた原初ルーンと青菫石の首飾りを。
気付けば、それを彼女が見詰めていた。箸をグーで握り締めた、子供のような姿で。
「それ、魔術士の護符だよね? 随分手の込んだ礼装なんだよ」
「ん、ああ。義母からね、貰ったんだ」
「へ〜、ケルト系の魔術士なんだね」
「ん〜、正確には魔女かな。後、神代からの騎士の家系だとか」
「“フィオナ騎士団”……ううん、ひょっとして“赤枝の騎士団”? すごいんだよ!」
「まぁ、俺は養子だからあくまで侍従。本当の末
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