第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
29.Jury・Night:『Ath nGabla』
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燻らせ、闇夜に吐き出す。弱い風に吹かれ、煙は高く登りながら消えていく。
「呵呵呵、面白いのう。面白い程に面倒な思考回路じゃ、貴様は」
「煩せェ……」
その男の背中に沸き立った影が、和服の娘となる。唐突に負ぶさった市媛は、燃え盛る三つの眼差しで彼を嘲笑っていた。
「それで? 先程の小部屋には去りげに何やら小細工をしておったようじゃが……この後は、どうするのかの?」
「……そこまで分かってんなら話は早い。後は、待つだけだ」
「ふむ……」
振り返る事もなく、扉の前で仁王立ちに。そのまま、『感じる』。周りの空気の質が変わった事を。前にも、似た空気を感じた事がある。あれは、そう……初めて魔術師との戦いを経験した夜に。
「どうやら、手間は省けたようじゃな」
「ああ、向さんから来てくれるとはな」
『人払い』のルーンによる、深海の如き静寂。人の気配は、自分のモノを含めて背中の一人と後ろの部屋の二人のみ。そしてどうやら、“悪心影”の『音源探知』には、もう二人を捉えているらしい。
勿論、他の誰である筈もない。階段から聞こえてきた足音、他には低く、地の底から響くような虫の声しかない夜の静寂には大きく響いて。
「今晩は、というべきでしょうか?」
「挨拶などどうでもいい────何の用かな、吸血魔術師?」
刀を携えた『神裂 火織』と、煙草を吸うステイル=マグヌスの二人が。
「俺が何処で何しようと、俺の勝手だろう。アンタ等こそ、何しようとしてんだ?」
返答はない。返ってきたのは、苛立ちと殺意の籠る視線のみ。彼等にとっては、正に闖入者であろう。
「何でも良い、邪魔をするのならば────」
煙草を投げ捨てる。虚空に赤く残光の螺旋を描きながら落ちていく煙草が、炎の剣となる。ステイルの魔術、『炎剣』が。
鈍く月の光を照り返した銀刃、“七天七刀”を抜き放った火織が。
それを構えた姿で、火織とステイルは一歩前に進み────その『陣』に踏み込んだ。
「“大鹿”、“必要”、“神王”、“豊穣”」
「っ……!」
刹那、嚆矢が唱えたルーンが。予め配置していた『カード』による、四文字のルーンからなる『四方陣』が励起した。
「ルーンの魔陣……ステイル、これは?」
「…………まさか、ここまでやるとはな。見直したよ、やっぱり君はイカれてるな!」
火織の問いに答える事もなく、ステイルは口角を吊り上げた。この四文字、その意味を正しく理解しているから
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