第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
29.Jury・Night:『Ath nGabla』
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裔は、義妹の方だけどね」
珍しく、魔術の話が出来る相手との会話に花が咲く。先ずは、己の情報から。その合間に、“話術のルーン”を刻む。
「因みに、インデックスちゃんのとこってどんな感じの教会なんだい? その繋がりで、誰かに追われてたんだろ?」
『必要悪の教会』とか言う教会の内情。或いは、ステイルと火織の情報を聞き出すべく。
「えっとね……わたし、一年前以前の記憶はないんだよ」
「記憶がない?」
「うん、何でかも分からないんだよ」
だが、返ってきたのは申し訳なさそうな表情とそんな言葉。これで、どうやら道筋は途絶えた。少しでも情報を得て、あの二人に優位に立てるものが欲しかったのだが。
記憶が無いのでは、仕方ない。女性の言葉だ、嚆矢は疑わない。信じてもいないが。
「ふふ、こーじはいい人だよね」
「? なんだい、いきなり?」
「だってこーじ、ご飯一杯くれるし魔術も信じてくれるし」
「そりゃ、金はあるし魔術は知ってたしね」
と、唐突に彼女が微笑む。既に二つ目の弁当を平らげ、三つ目の海苔弁に手を掛けながら。
「でもでも、とうまは魔術を信じてくれないんだよ。超能力は信じてるし、自分も右手に“幻想殺し”なんて代物を持ってるくせに。この“歩く教会”も、それで壊されたんだよ?」
「ハハ、人間なんてそんなもんだよ。誰しも、自分の日常から逸脱した事は信じたくないんだ」
飲み干した空き缶をクシャリと潰し、ゴミ箱に。窓から見える夜空は、赤く潤んだ下弦の月。禍々しく嘲笑う口許のように、つり上がった月だ。
その不吉さに、期の到来を悟る。有意義な時間だった、確かに────再確認は、出来た。
「じゃ、あんまり病人が居て家主さんが居ない所に長居する訳にはいかないし……お暇するよ」
「ん〜、もふかへるほ?」
「こらこら、口にモノ入れたまま喋らない。またね、インデックスちゃん」
「ん、んっく……ふぅ。うん、またねだよ、こーじ」
描いたら共に手を振れば、同じものが返ってくる。充分だ、これで。これで────十二分に、戦う理由ができた。
ポン、と一度頭を撫でてから扉を開け、夜半の都市へ。冷めやらぬ熱気と、闇の中へ歩み出る。
懐から煙草とライターを手に、立ち止まらずに火を点す。それを思いきり肺腑で味わいながら、手摺に寄りかかりつつ。
「…………」
紫煙を
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