王の荒野の王国――木相におけるセルセト――
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ルの下からは、思いもよらぬ顔が現れた。
ニブレットは笑う。首を仰け反らせ、高く笑う。
「何という事だ! この男、私と同じ顔をしているではないか」
サルディーヤがむき出しの魂で笑う。ニブレットも同じ顔で笑う。肉体なき体は牙と鋭い爪を生やし、互いの体に食らいこむ。
ニブレットは血を流しながら、サルディーヤの喉仏に牙を立てる。サルディーヤは血を流しながら、ニブレットの腹を鋭い爪で貫く。食いあう魂の争いを片隅の些事として、深遠なる紫紺と緋の色彩は、和合し、混ざり合い、閉じる。
荒野から、緋も紫紺も魔術の力も消えた。地には晴れ渡る夜空と星々の色彩、空には月を隠した雪雲が広がるばかりであった。
三頭の馬はいずれも、先刻の魔力の衝突に怯え、とうに逃げ出していた。荒野の奥から冷たい風が吹き、捲れあがった二枚の敷布がラピスラズリの大地を滑っていった。カンテラは砕け散り、明かりとなる物はなかった。雲が割れ、月が出た。月光が、地に伏すただ一人の人間の輪郭を浮き彫りにした。
その人間は、意識を取り戻すと、手をついて体を起こした。座りこみ、辺りを窺って、他者の不在を確かめる。
「勝った」
荒野にただ一人の人間は、低い声で宣言した。
「勝ったのは私だ」
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