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Lirica(リリカ)
王の荒野の王国――木相におけるセルセト―― 
―4―
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口は大概にした方がいい。死後の生を与えられた恩を忘れるな」
「貴様は私から呼び名を与えられた恩を忘れたみたいだがな」
 サルディーヤの口から笑みが消えた。
「いつまでも何も知らぬままと思うな」
 レンダイルがサルディーヤを作ったのならば、サルディーヤの真の名をつけたのはレンダイルだろう。果たして自分はその名をレンダイルから聞いていただろうか。レンダイル亡き今、自力で思い出すしかない。
 どこか遥か遠くで、強い魔力の軋みが生じた。その軋轢は遮るもののない荒野を渡り、二人の魔術師の感性に訴えた。魔術師たちはその軋みを、悲鳴のように感じた。
「捕らえたな」
 ニブレットは唇を片方だけ吊り上げて笑う。背中に手を回し、帯に挟んだ黒曜石の手鏡を外した。魔力の軋みの発生源での出来事を覗き見ようとした瞬間、記憶の中の、自分の声が耳を打った。
『私の鏡に穢らわしい物を映すな!』

 ニブレットは左手に黒曜石の手鏡を携え、立っている。右手には剣。足許で、一羽の白耀鳥が大きな翼を広げて死んでいる。切り裂かれた体から流れる血に、飽くなき雪が降り積もる。ニブレットは剣の血を拭き、鞘に納めた。そして、鳥の前にしゃがんですすり泣く若すぎる侍女アセリナを、冷酷な目で見下ろした。
 第一王女ブネが、この小さな庭に現れた。侍女アセリナはまだ子供だ。ブネが目をかけ、他の侍女たちによる陰湿な苛めから庇っている。本人はそのつもりだ。庇えば庇うほど、見え難く、陰湿になるだけだというのに。白耀鳥はブネが飼い、アセリナが世話していたものだ。ブネは息をのみ、駆け寄って来た。
「何と惨たらしい事を。ニブレット、これはあなたが」
「だとしたら何だ。白耀鳥は我が神ヘブが使いの軍馬の天敵ぞ。目障りでならん」
「さような伝説は、この鳥には罪なき事。ああ、かわいそうなアセリナ」
 ブネはむせび泣くアセリナの震える背中を撫でながら、ニブレットに非難の目を向けた。
「ニブレット、あなたは人間らしい心というものを知るべきです」
 ニブレットは薄笑いを返した。
「お前はイヴィタと同じ事を言うな。ところでブネよ、我らが母上は先が短いようだ。ベリヤ亡き後、イヴィタと同じ道を辿らぬよう気を付ける事だな」
 ブネの痩せた頬から血の気が引く。
「白耀鳥の一件に関しては、非はお前にあるぞ。ヘブの崇拝者にとって白耀鳥は穢れ。私は分魂の儀式を控え、穢れとの接触を禁じられた身だ。鳥など籠にしまっておけばよかったものを」
「あなたがこれほど冷血であるとは思いませんでした、ニブレット」
 木戸を軋ませて、オリアナが姿を見せた。彼女は姉妹の様子に困惑を見せるも、表情を押し殺してニブレットの足許に傅いた。
「ニブレット様、分魂術の支度が整いました」
「ご苦労。行くとするか」
「ニブレット」
 憐れを誘
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