第140話 呂岱士官する
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「蓮華様!?」
孫権の突然の申し出に甘寧は平伏したまま驚いた。
「路銀が心許ないだと?」
正宗は胡散臭い者を見るような目つきで平伏する孫権のことを見た。
「荊州の中心地は南陽郡と長沙郡。その長沙郡の太守である孫文台は南陽郡への旅にかかる路銀すらまともに捻出できないのか? 孫文台の太守としての資質を疑ぐってしまう。これは朝廷へ上奏せねばならんかもしれんな」
正宗は孫権の母・孫堅を小馬鹿にした。甘寧は体を震わせて黙って平伏していた。だが、地面につく指が地面に食い込んでいることから彼女の怒りが伺い知れた。正宗は甘寧を暫し凝視していたが興味が失せたように孫権に視線を戻した。正宗は甘寧を孫権のアキレス腱と見ているのだろう。甘寧を暴発させて話を煙に巻きたい正宗の心中を孫権は感じ取っていた。
「南陽郡への旅は私事でございます。母とは関係無きこと。清河王、どうか母への謂れ無き誹りは撤回していただけないでしょうか?」
「下郎! 口を慎め」
泉は孫権に対して罵声を浴びせるが正宗が手で制した。
「それは済まなかった。悪気は無かったのだ許せ」
正宗は淡々と孫権に謝罪した。甘寧は正宗の謝罪の仕方が不満なのか先ほどにも増して体を震わせていた。
「生憎、この店は燕璃のもので私のものではない。燕璃どうなのだ?」
正宗は燕璃に視線を送ると目で訴えるように「断れ!」と合図を送った。燕璃は正宗の視線に困った表情を浮かべた。燕璃も孫権が路銀に困っているというのは嘘だろうと思っていた。燕璃は嘘であろうと困っている人間を見捨ているのは矜持が許さない性格だった。だが、主君である正宗の意向を前に自らの矜持との板挟みになった。彼女は沈黙して正宗に平伏する孫権を凝視していたが口を開く。
「孫家の嬢ちゃん、南陽郡への旅の理由を聞かせてもらえるかい。今回の旅は長沙郡太守の公事ではないんだよね?」
燕璃は真面目な表情で「長沙郡太守の公事」を強調して尋ねた。孫権が一瞬固まるのを正宗・冥琳・燕璃は見逃さなかった。南陽郡へは私事で来たわけではないことは間違いない。
「はい違います」
孫権は燕璃の質問に短く答えた。
「じゃあ理由は何なんだい? 路銀が心許ないのなら長沙に帰ればいいだろ。南陽から長沙まで大した距離じゃない」
燕璃は孫権に無難な方法の提案をした。彼女の提案は正宗の意向と自らの矜持を守れるものなのだろう。燕璃の言葉に孫権は沈黙してしまった。燕璃の提案は至極最もだからだろう。だが、今更「長沙郡太守の公事」という訳にもいかない。そのようなことを言えば「南陽郡太守に話を通しているのか?」という話に発展して孫権にとって困った事態に成りかねない。
「どうなのだ?」
正宗は孫権に返事を催促
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