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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第140話 呂岱士官する
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気や良し。だがお前の主人の存念はどうなのだ。命の取り合いとなれば私は手加減せんぞ。お前は私に勝てると本気で思っているのか? 私の殺気に気圧されて身動きできなかったお前に」

 正宗は甘寧を見透かしたように見つめ、視線を孫権に向けた。孫権と甘寧が動揺した表情になった。二人は分かったのだ。自分達が初めから正宗達の話に聞き耳を立てていたことに。
 正宗は人の発する気の流れで人や動物の存在を察知できる。人が恐怖を感じたり体を緊張させた場合、体に流れる気の流れが乱れるため正宗には手に取るように分かるのだ。だから、正宗は自分の放った殺気で甘寧と孫権が身動きが取れない状態にあったことを知り得た。白兵戦で敵の殺気に怖気て体を硬直させるとは死を意味する。

「思春、剣を収めなさい!」

 孫権は厳しい表情で甘寧に叱咤した。彼女は戦場を未だ知らないが、それでも正宗の圧倒的な殺気から正宗が甘寧を圧倒する武人でると察したのだろう。
 甘寧は孫権に叱咤され逡巡しながらも大人しく鈴音を収めた。しかし、彼女の瞳は正宗に対して怒りを覚えていることが傍目からも分かった。

「供の者が失礼をいたしました。お許しくださいませんか?」

 孫権は正宗に対して頭を下げた。

「謝罪は受けよう」

 正宗は孫権の謝罪を受け入れた。彼は一瞬落胆の色を見せていた。もしかしたら甘寧の暴走でこの場を濁すつもりだったのかもしれない。しかし、孫権は素直に謝罪してきた。ここまで来ると彼も名を名乗らざる終えない。
 正宗は「何故に私に縁を持とうとするのか」と思った。孫家を監視させていた彼には孫権の存念はだいたい検討がついていたが、彼は孫家と縁を持つつもりは無かった。孫権のことを暫し見つめた後、徐に口を開く。

「まあいい」

 正宗は言葉を区切り口を開く。

「我が名は『劉正礼』。前漢の高祖の孫である斉の孝王劉将閭の裔にて牟平共侯劉渫の直系末孫。先帝より車騎将軍、冀州牧の官職を賜り、爵位は清河王である。素性を明かしたのだ平伏せよ」

 正宗は孫権と甘寧を睥睨して威厳のある態度で言った。孫権と甘寧は正宗の名乗りを受け表情が固まっていた。

「清河王の御前である。控えぬか!」

 冥琳は孫権と甘寧に対して言葉を荒げて言った。冥琳の言葉に二人は「ハッ」として慌てて平伏した。

「孫仲謀、今一度言う。三度言わんぞ。今日のことは全て忘れろ。いいな」

 正宗は感情の篭らない声で孫権に言った。正宗の言葉に反応して孫権は体を固くするのが分かった。

「清河王、恐れながら発言してもよろしいでしょうか?」

 孫権が平伏したまま正宗に言った。

「直答許す。何だ?」
「私は路銀が心許く、ご迷惑でなければこの店で給仕として働かせいただけませんでしょうか?」

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