第140話 呂岱士官する
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正宗はドスの利いた声で言った。正宗の言葉に最初に反応したのは泉だった。泉は銀槍を持って店の戸を乱暴に開け放ち出て行った。
「貴様、何奴だ! そういえば……先程通りがかった時にすれ違ったな」
泉が聞き耳を立てた二人を発見したようだった。二人は当然だが孫権と甘寧だ。
「思春、武器を下げなさい!」
孫権が甘寧を止める声が聞こえた。泉と甘寧がもめているのだろう。暫くすると孫権と甘寧を連れ泉が店に入ってきた。孫権はバツが悪そうな表情をしていた。対して甘寧は敵愾心むき出しの表情をしていた。
正宗は孫権と甘寧を確認すると露骨に面倒そうな表情に変わった。その表情を冥琳は見逃さなかった。燕璃と愛紗は二人の素性を知っているため何ともいえない表情をしていた。
正宗は連れてこられた孫権と甘寧を見て沈黙していた。他の者達も正宗が口を開くのを待っている。泉は二人が逃げ出さないように店の入り口に陣取り銀槍を持ち立っていた。
「盗み聞きをして申し訳ありませんでした」
沈黙した空気を破ったのは孫権だった。孫権は謝罪し頭を下げてきた。彼女は盗み聞きしていたにも関わらず正宗のことを「劉将軍」と呼称しなかった。気が動転していたのか、意図的に呼称しないのかはわからない。
「どこから聞いていた?」
正宗は徐に孫権に聞いた。彼女と甘寧が初めから聞いていたことは承知の上で敢えて聞いた。
「全部です」
孫権は項垂れ語尾が尻窄みになった。正宗は正直に答えた孫権に感心した。甘寧は孫権の言動を心配したのか孫権に視線を向けた。
「全部か」
正宗は右手に握った片手剣を胸あたりまでに上げ、その剣で左掌を何度も軽く触れるような動作を続けた。孫権は正宗の態度を不安そうな表情で見ていた。
「今日のことは全て忘れろ。いいな」
正宗は徐に孫権に言った。だが、孫権は悩んだ表情をした後、意を決したように口を開く。
「私は孫仲謀と申します。あなたは高明な人物とお見受けいたします。お名前をお聞かせくださいませんでしょうか?」
「女。正宗様のお言葉が聞こえなかったのか?」
冥琳が眉間に皺を寄せ孫権に強い口調で言った。それに甘寧が歯噛みして冥琳を睨むんでいた。冥琳は甘寧の視線に不快感を覚えているような様子だった。
「孫仲謀とな? 孫文台の次女か。私も士大夫の端くれ。名を尋ねられれば名乗らねばならぬな。だがやり方が不愉快極まりない。私が言ったことを覚えていないのか?」
正宗は感情の篭らない声で孫権を睥睨した。孫権は正宗の迫力に肩を固まらせた。
「貴様! 黙って聞いていればいい気になるな」
甘寧は獲物である曲刀・鈴音を構えた。正宗は薄い笑みを浮かべた。
「その意
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