第140話 呂岱士官する
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孫権と甘寧は呂岱の胆力に驚いていた。冥琳と泉の剣幕は常人なら震え上がるような雰囲気を漂わせていたからだ。
呂岱は冥琳と泉の様子をしばらく見つめていた。
「悪乗りし過ぎたかね」
呂岱は口を開くと言った。冥琳は訝しむ表情で呂岱のことを見た。
「私に正礼を辱めようなんて気は更々ないさ。愛紗の件で正礼の態度が気に入らなくてついね」
「今更、詫びを入れようというのか?」
冥琳が険しい表情で呂岱を見た。呂岱は被りを振った。
「愛紗の件で間違っていたとは思っていないよ。正礼が屑野郎だったら愛紗が可哀想だからね」
呂岱は落ち着いた表情で淡々と答えた。その表情は穏やかだった。呂岱はちらりと愛紗の方を見た。冥琳は呂岱の様子を見て険しい表情を少し緩めた。
「正礼のことを試すつもりで出した条件だったけど、正礼の人となりはこの二週間位で良くわかった。愛紗を安心して任せられると思っている」
「女将さん」
愛紗が呂岱の言葉に感動しているようだった。泉は額に青筋を浮かべ苛ついている様子だったが沈黙していた。
「正礼の様な身分の人間がこんな店で働いていては立つ瀬ないことは私も馬鹿じゃないからわかるよ。だから、正礼のことを私は尊敬している。人は立身すればするほど狭量になるものさ。だから正礼は貴重な存在だと思う」
「我らが来て怖気付いたのか」
泉が侮蔑気味に言うと呂岱は被りを振った。
「生憎と恐怖には鈍くてね。あなた達の正礼への飾りのない熱い忠義心に感じ入っただけさ」
呂岱は冥琳と泉に対して微妙に口調を変えていた。いつもなら「あんた達」と言いそうだが「あなた達」と言っていた。
「その物言いなら正宗様が今辞めても何も文句ないということだな」
冥琳は目敏く呂岱に言った。呂岱は頷いた。彼女は調理場の奥に引っ込んだ。しばらくすると手に片手剣を持って戻ってきた。
呂岱は正宗の前に進み出るなり片膝をつき屈むと右手に持った片手剣を自らの右側の地面に置き拱手した。冥琳、泉、愛紗はその様に戸惑い。外で様子を伺う孫権と甘寧はその様に見入っていた。
呂岱の様子は普段の飄々としたものでなく武人然した堂々としたものだった。正宗も呂岱の態度の豹変振りに戸惑っている様子だ。
「劉将軍、十分にあなたの人となりを拝見させていただきました。呂定公の今までの数々の無礼許していただこうとは思いません」
呂岱は正宗に言うと地面に置いた片手剣を抜き刃を自らに向けた状態で正宗に剣を差し出した。その様子に場に居合わせた皆が驚いていた。
「定公、どういうつもりだ」
呂岱のどのような了見で剣を渡してきたか正宗は尋ねた。
「劉将軍の望まれるままに。これで私を斬るなり、殺すなり為されませ」
呂岱
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