雷鋼の目的
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り『生じてしまった』ものなのじゃ。予期せぬものであったといっていい。しかも、それは僅か一滴でも、超常の力を与える危険物じゃ。由来が由来だけに下手に捨てることもできんし、尋常な方法では処分することもできん。そして何より、綱様より続きし渡辺一族は、儂の代で潰える。儂が直系最後の一人であり、最後の『鋼』じゃからな。本来なら、『卜部』『碓井』『坂田』の一族、若しくは君主たる『源』に管理を委ねるべきなのかもしれぬ。
しかし、はっきり言って、今のいずれの家にも委ねる気にはなれぬ。弱すぎるし、それゆえに力を求めて、邪な考えに取り憑かれる者がいないとも限らぬからな。だからこそ、『鋼』が消えると共にこの『心血』も消えねばならないのじゃ」
「その為の適当な素体が俺?」
「そうじゃ、光栄に思うが良いぞ。一滴や二滴ならともかく、残っている血の量は半端なものではなかったからな。並の者では、頼光様の心血に肉体と魂が耐え切れぬ。神降ろしとも言うべき『ペルソナ』で驚異的な肉体の頑強さを持ち、強大な魂を持つお前はまさに打って付けだったのじゃ」
「それでもギリギリだったみたいなんだが……」
「別に失敗しても構わぬ。儂としては、頼光様の『心血』を始末できればいいのじゃからな。お前が死んでしまっても、一向に構わぬ。まあ、もう一つの目的は達成できぬが、それはそれで仕方のないことじゃ」
平然と己が死んでいたとしても構わないと宣う雷鋼に、透真は隠しきれぬ殺意を抱く。
「この糞爺が!」
「なんじゃ、やる気か?その疲労困憊の体で、儂に勝てるとでも本気で思っておるのか?」
「くそっ!」
雷鋼の言葉はどうしようもなく真実だ。その強さは、他ならぬ透真自身がその身をもって知っているのだから。今の状態では、殺すどころか指一本触れることすらできないだろう。それを理解しているだけに、透真は苛立ち紛れの悪態をつくことしかできない。
「ふん、己の力量は弁えているようじゃな。いいじゃろう。今この時をもって、お前は儂の正式な弟子じゃ。今より『水原 徹』と名乗るがよい」
「正式な弟子って、今まで俺は弟子じゃなかったのかよ?!」
新しい名前より、今まで弟子として認められてなかったことに愕然とする透真。
「まあ、弟子は弟子じゃが、仮弟子といったところか。大体、考えてもみよ。儂は今までお前に何か教えたことがあったか?」
「そういえば……」
思い返してみれば、雷鋼は一度たりとして、透真に何かを教えたことはなかった。課題をかし、それをクリアするまでひたすら攻撃してくるだけだったのだ。
「ふぉふぉふぉ、気づいたようじゃな。じゃが、これからは違うぞ。儂の全てを、頼光様の術技全てをお前に教え込む。そして、それが終わっ
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