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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
幕間 白妙菊
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不安を感じているからだと思っていた
 けど……



「……悲しい」



 ……小さく呟く



「……苦しい」



 ……湧き上がるものが溢れるように



「……寂しい」


 ……小さく声が溢れる


「……辛い」


 いつしか頬を流れる涙……

 それは一雫ずつ目尻から溢れ、柔らかな頬を伝い……

 乾いた荒野に滴り……

 ゆっくりと染み込んでいった……



 






「……あっ」

 視界の先に、剣ではない、荒野から突き出している影に気付き、小さな声が上がる

「丘」

 その影に向かって歩いていくと、それが小さな丘であることが分かった

「あれ? ……シロ、ウさん?」

 丘の先には、男が背中を向け立っていた
 丘に近づいていくと、その男が想いを寄せる男であると気付き、呆然とした声を上げるたが、すぐに辛そうに歪んでいた顔を破顔させると、男の下に向かって駆け出し

「シロウさん……シロウさんっ! ……シロウさっ――……え?」

 咲き誇る花畑に

「……おは、な、ばた、け」

 立ち止まる









 赤……白……黄色……薄紅色……黄緑……

 田舎育ちで、山や草原に咲く様々な花を見たことがあったが、今目に映る花は、どれ一つ見たことも無かった

「はっ……はっ……ぁ」

 駆け出していた足は、その速度を段々と落ちていき……止まった

「……綺麗な花」

 荒野が突然様々な花が咲き誇る花畑に変わり、思わず立ち止まり、一時呆然と立ちすくんでいたが、花畑の端に、まだ花開いていない花が視界に入った瞬間、立ち止まっていた足が自然と歩みだした

「……これは」

 そこには、今まさに花開こうとしている花が三つ、蕾が一つ、そして芽が出たばかりのものが一つ。足を曲げ、花に顔を近づけていくと、白い繊毛により、茎や葉が白銀色に見える花から

「このお花から?」

 風に混じって薫った花の香りを感じた

「可愛いお花」

 それは特に綺麗な花ではなく、周りに咲く花を引き立てさせるような地味な花ではあったが、何故かその花に惹かれ、自然と手が花に向かって伸びていく

「不し――あ……?」









  

 花に触れると、堰を切ったように涙が流れ出した  

「あ? え? ええ? あ、あれ?」

 突然溢れ出した涙に、戸惑いの声を上げていたが

「どうして? え? あっ……」

 急に、理由が分かった   

「……そうな、んだ……」




 感じたのは……   



 痛み……

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