第百九十三話 高天神からその十二
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「思う存分暴れてみせます」
「織田の兵共を吹き飛ばしてやります」
まさにそうするというのだ。
そしてだ、霧隠も設楽ヶ原の方を見て言うのだった。
「殿、我等十勇士も及ばずながら」
「戦ってくれるのじゃな」
「無論です」
笑みを浮かべての言葉だった。
「お任せあれ」
「さて、猿飛が戻れば」
「うむ、また十勇士が揃う」
筧と由利も話す。
「我等十勇士が全て揃えば」
「どの様な敵もものの数ではないわ」
「そこに殿もおられる」
「負ける筈がない」
「いやいや、油断は出来ぬぞ」
「織田の数は多い、強き者も多い」
海野と望月が筧と由利を窘める。
「だからここはな」
「油断せずにじゃ」
「心を引き締めて行くぞ」
「戦にな」
「二人の言う通りじゃ」
幸村も海野と望月の言葉をよしとした。
「織田家の軍勢は二十万、しかも智将猛将揃いじゃ」
「だからですか」
「戦の時も」
「先の戦でも引き分けた」
あの三河口の戦のことも言うのだった、武田が上杉と北条以外に引き分けた戦として彼もよく覚えているのだ。
「それを考えるとじゃ」
「織田、侮れず」
「左様ですか」
「そうじゃ、そろそろ佐助も戻るがな」
その猿飛もというのだ。
「油断は出来ぬ」
「気を引き締めて、ですな」
「そのうえで」
「そうじゃ、勝つぞ」
敵を侮らずに戦をする、それが幸村だ。
「わかったな」
「殿、お待たせしました」
ここで最後の声がしてきた、そして。
猿飛は幸村の馬の横に姿を現した、そのうえで彼にあらためて言って来た。
「織田家の軍勢ですが」
「こちらに向かっておるな」
「はい、それも丸太と縄を持って」
「丸太に縄か」
「何故かはわかりませぬが」
こう言いながら幸村に報告するのだった。
「兵達はそれを持ってこちらに来ています」
「どういうつもりじゃ」
幸村もそう聞いてもわからなかった、いぶかしむ声だった。
「それは」
「殿もおわかりになられませぬか」
「どうもな」
実際そうだとだ、幸村は猿飛に答えた。
「わからぬ」
「左様でありますか」
「織田信長、どういうつもりじゃ」
首を傾げさせての言葉だった。
「丸太と縄をどう使うのじゃ」
「しかし何か考えがあることは」
「うむ、それはな」
確かだとだ、幸村は海野に答えた。
「間違いない」
「左様ですな」
「用心して行こうぞ」
信長の真意はわからなかった、だがだった、
幸村もまた戦に向かっていた、織田と武田はそれぞれの軍勢と将帥達を揃えそのうえで決戦に赴こうとしていた。
第百九十三話 完
2014・8・11
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