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IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-25
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心情の変化でもあったのか……いや、それはないな。おそらくただ単純に休みの日ぐらいは休んでいたいのだろう。できればこれをきっかけにして仲良くなりたい。セシリアに呼ばれた一夏は返事を返しながらそう思う。


 ◯


「いやあ、遊んだねえ」
「そうだな、こうやって遊ぶのも少し久しぶりだな」


 夕方になるとゲームセンターを後にして学園へ戻る二人。二人の距離は近く、手を繋いではいないものの普通の仲ではないことを窺わせる。
 買った物はすでに寮の方に送ってあるため、ほとんど手ぶらな二人は沈みゆく夕日に照らされながら歩いていく。こうやって遊べるのはもうないかもしれない。これからはこの二人を中心として世界を巻き込んだ大きな事件が起こる。その中には平穏なんてものはないのかもしれない。最悪、世界大戦の再来になってしまうかもしれない。そうなってしまえば、もはや地球は死絶えるだろう。


 二人は自然に足を止めた。沈む夕日に目を向ける。眩しいが、心に温かさをくれるような気がする。
 あと数か月もすると世界は慌しくなる。男は叫びながら戦い、女は振るえながらも戦い、子供は泣き止まない。そんな世界が来てしまうのかもしれない。


 二人の間に言葉はなかった。夕日が海に飲み込まれていくようだ。段々、辺りが暗くなってくる。
 罪のない人を巻き込んでしまう。一般人を巻き込んでしまう。その責任はこれからことを起こそうとしている二人にすべて回ってくるのだろう。それでもやめることは選択肢にはなかった。


 二人は再び歩き始めた。夕日が完全に沈んだ。東の空から辺りに夜の帳が落ち始める。
 二人には関係ない。そんな言葉で済ませてしまえるほどこれから起こそうとしていることは簡単なことではなかった。責任をどうやって取るのか。――――死んで償う?


 二人の間に言葉は必要ない。街灯が学園までの道を寂しく照らす。あと三百メートルといったところだがその間には住宅などの建物はない。心に陰りを与える。
 死。死ぬってどういうことだろう。死ぬってなんだろう。死って一体――――。


 二人は手を繋いだ。優しい星の光が夜空を埋め尽くしている。
 気持ちは通じあっている。お互いの気持ちが手に取るようにわかる。大丈夫。怖いものはない。恨みも後悔も悔いも責任も怒りもすべて受け止める。


 もともと二人が歩こうとしているのはそんな茨の道なのだから。







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