鬼神
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瞳は紅で染まり、髪は白から黒へと染まっていった。歯を剥き出しにし、今にも目の前の敵を喰い千切るかのような殺気を放ち、その姿はもはや獣を通り越していた。
「オマエヲ・・・」
その姿は───
鬼、そのものだった。
「・・・コロスッ!!」
次の瞬間、ザザの目の前からシオンが消え、背後に回り込まれていた。
「ッ!」
「ガァアアアアッ!!!」
シオンは素手でザザを殴り飛ばし、ザザはまるでゴムボールのように地面を跳ね、転がった。
体勢を立て直そうとするも、シオンはザザの頭を鷲掴みにすると一気に地面に叩きつけた。
「がはッ・・・!」
ザザは刺剣で振り払うと距離をとり、自分の身に今何が起きたのかを察知した。
「これが、鬼神の、力、か・・・」
ザザの目の前にいる男、シオンはもはや先程までの彼とは明らかに違っていた。怒りに支配され、力で目の前の敵を喰い千切る魔物。今のザザにはそう見えた。
「面白い・・・」
「ガァアアアッ!!!」
目の前で咆哮をあげるシオンに対してザザはそう言った。
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「シオン・・・」
「シオンくん・・・」
雫と明日奈は今まさに目の前で鬼神となっているシオンを目の当たりにし、言葉を失っていた。
「あれが、鬼神・・・」
「なんて、強さなの・・・」
二人が驚愕したのは彼の姿ではなく、その異常なまでの強さにあった。素手で殴っただけで何十メートルも吹き飛ばすパワー、一瞬で背後に回り込むスピード、そのどれもが桁違いだった。
「確かに、強い。強いのに・・・」
今の彼は確かに強い、このままいけば勝つことができるかもしれない。
しかし・・・。
「どうしてあんなに悲しそうなの?」
雫はシオンの顔を見て思った。怒りに支配され、苦痛に顔を歪め、力で目の前の敵を倒す。
それは以前の彼ならあり得ないことだった。
「エリーシャちゃん・・・」
明日奈は雫の肩に触れると、明日奈の携帯からユイの声がした。
『ねぇね、にぃにの手を、握ってあげて下さい。アミュスフィアの体感覚インタラプトは、ナーヴギアほど完全ではありません。ねぇねの手の温かさならきっとにぃににも届きます。ねぇねの声もきっと・・・』
「ユイちゃん・・・」
雫はベッドで横になっている雪羅の右手を優しく両手で包み込んだ。ありったけの心の声を伝えるために・・・
『お願いシオン、戻ってきて・・・』
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