6-2話
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殺されたのだろうか…。
いまだに頭の中がグチャグチャしていて正確な員数を数えるような余裕がない。 自分より…いや、同じくらいで構わない、落ち着き払っている人がいればどれだけ助かるか…。
「なぁ…どうすんだよ……あんなのがいるなんて、俺達…どうなるんだ?」
「大丈夫だよ…すぐに助けが来るって…無線があるんだ…! きっと明日にでも救助が来て……」
無線。 救助。
この二つの単語だけが頼りだ。
乗客はそれを支えにしないと…ハリボテでしかないそれがないと、私はこの者達をまとめる事ができないのだ。
どこまでも持たせるかわからない…それでもやらなくてはいけないのが、機長としての責任なのだ。
だからあと少しでも……彼らを長く騙して…。
「救助だ……いや、救援だ! 今すぐ無線で助けを呼んでもらうんだよ! そうすれば助かる!!」
「なっ……!?」
何、を…何を言い出すのか!?
まさかこんな時に…いや、こんな時だからこそ言い出したのだろう。
個人ではどうにもならないあの“イキモノ”をどうにか出来ないから、一秒でも早く頼るものに縋りたいから当然の帰結だ。
しかし、それが出来るわけがない…。
「だ、駄目だ! そ、それは出来ん……」
「な、なんでだよ!!」
掠れるような声で言った言葉は、乗客の一人はしっかりと聞き捉えた。
「説明しろよ!!」
「なんで無線使わないんだよ! おい!」
流れが転がる…。
怯え惑っていた態度が途端に攻撃的になって、自分を糾弾する声を痛いほどに叩きつけてきた。
彼らにとっては蜘蛛の糸のような命の手綱を切られたような気分なのだろう。
糸の先が活路に通じていない以上、私は言葉を重ねる以外になかった。
「じきに…じきに助けが来る。 だからそれまで…」
「じきに助けが来るって…それがいつ来るんだよ!! あの化け物どものがいるってのに…周りあんなのがうじゃうじゃいる所で大人しくしろってのかよ!!!」
怒りの形相が迫る。
恐怖でくたびれた顔をさせた中年の男が、表情を醜く歪ませて私の襟首を掴みかかってきた。
あの“イキモノ”に襲われた時は命の危険を感じたが…中年の顔が恐ろしく見えた。
待て、と静止の声を呼びかけるが、中年の後に続くように周りの乗客も一緒になって私の体という体に手を伸ばし、重い責任と共に一方的な力を押し付けてくる。
自分の命だけを考えて縋るその姿は亡者だ…。
「ふざけた事言ってないで、さっさと無線を使え!!」
「ま…待ちたまえ!!」
波のような亡者達が詰め寄る押し寄せる力が止められない。
体を張っても、私はあっと言う間
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