暁 〜小説投稿サイト〜
力持ちは難しい
第五章

[8]前話
「作ってるから」
「それもですか」
「そう、大変だからね」
 それでというのだ。
「力加減は心から気をつけて」
「そのこともですか」
「やってるわよ」
「力があってもですね」
「それを維持することとね」
 そして、だった。
「加減はね」
「難しいんですね」
「力があることはいいことよ」
 このことは事実だとだ、メタルは言う。
 しかしそれと共にだ、彼はこうも言うのだった。
「けれど加減はね」
「必要ですね」
「その通りよ、そしてワテクシは」
「メタルさんは」
「この力はあくまで料理、つまり芸術の為のもので」
 それで、というのだ。
「決して殴ったり蹴ったりすることには使わないわ」
「そういえばメタルさんは」
 ここで凌も気付いた、そのことに。
「暴力は振るわれませんね」
「言葉でもね」
「力はですね」
「そう身に着けてもね」
「暴力の為にあるんじゃないんですね」
「力を暴力に向けることはあってはならないことよ」
 決して、という言葉だった、
「それは芸術の為にあるものだから」
「料理に」
「そう、ワテクシは鍛えてるの」
 そして力を備えているというのだ。
「そういうことなのよ」
「わかりました、メタルさんのことが」
「ワテクシのことがなのね」
「よく、そういうことですね」
 凌は強い声で言うのだった。
「俺、勉強になりました」
「それは何よりよ。じゃあ貴方も」
「いや、メタルさんみたいには」
 そのポージングまでしている見事な身体を見ての言葉だ。
「なれないですから」
「だからなのね」
「はい、俺は俺で」
 それでというのだ。
「働いていきますから」
「貴方のスタイルで」
「そうしていきます」
 こう答えはしたが実は彼もこっそりと己を鍛えだした、とはいっても起きて軽くジョギングする程度であるが。しかしそうしてだった。
 鍛えることもはじめた、そのうえでメタルを見てだ。やはりこう言うのだった。
「あの人は本当の意味での力持ちだな」
 尊敬さえ含めて言うのだった、彼の力がどういったものかを理解したうえで。


力持ちは難しい   完


                         2014・6・25
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ